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【ココロ活】推しが導くJDD VOL.30 FINAL

推しは、いつも新しい扉を開いてくれる。


JAPAN DANCE DELIGHT VOL.30 FINALは、1994年の初開催以来、毎年行われているストリートダンスの情熱と才能が集結する最高峰の大会だ。

8月25日の午後、1Fだけでも収容人数が3000人を超えるパシフィコ横浜の国立大ホールで開催された決勝大会には、全国や海外の予選を勝ち抜いた全46チームが優勝を目指して集結していた。

そんな場所に一人で足を運ぶなんて、一年前の自分には想像すらできなかったことだ。


筆者がダンスを見はじめたのは、そう遠い昔のことではない。

コロナ禍で外出が制限され、出不精になった時期に、偶然、ストリートダンスの動画配信を目にしたことがきっかけだった。

当初は、好きな音楽に合わせて人々がどのように踊るのかという視点で、気軽に楽しんでいたに過ぎなかった。

だからライブに行こうという考えは、まったく起きなかった。


しかし、昨年の7月、リアルアキバボーイズ(RAB)の動画に出会ったことで転機が訪れた。

人間技とは思えない高度なブレイキン技でアニソンやボカロに音ハメ、歌詞ハメする独自のスタイルと、その道をずっと貫く強い生き方に心惹かれた。

過去の映像を夢中で観るうちに、実際にパフォーマンスを見たいと思い、初めてライブに行ったのが昨年の10月だった。


それ以来、SNSで出会ったRABの推し仲間たちとつながり、様々なライブやイベントに一緒に参加するようになった。

そして、この8月10日には「あきばっかーの」というアニソンxダンスバトルにも足を運ぶまでに至ったほどだ。


だが、これはバトルとは言ってもストリートダンスだけにとどまらず、アイテムを使ったパフォーマンスやコスプレまで、何でもありのイベントだ。

楽曲が馴染みのあるアニソンやボカロなので、楽しめることは観覧前からわかっていた。


一方、このコンテストで知っていたのは、RABのメンバーであるムラトミさんが、もう一つの所属チームであるHead Spin Masters(HSM)として出場し、あえてヘッドスピン技だけで挑むということだけだった。

もちろん推しが出るのだから観てみたいという気持ちはあった。

しかし、14:30に開始し、21時の結果発表まで続く長丁場の中で、HSMのパフォーマンスを観られるのはわずか4分間だけで、他の出場者やそのダンスのことは何も知らないことに不安も持っていた。

また安くはないチケット代と、この日の午前中には別の用事もあって、行こうかどうしようかと悩んでいるうちに時間はどんどん過ぎていった。


急転直下、行くと決めたのは、大会の3日前、RABメンバー数人とその関係者だけが出演するst.ERAという音楽ライブに参加した時のことだ。

そのライブの中で、出演者のムラトミさんがコンテストへの参加を理由にエンディングトークに姿を見せなかったのだ。

ファンとの距離が近い彼がトークを欠席することに、今さらながら、こう思った。

「推しの、こんな真剣な取り組みを直接応援しに行かなくて、自分は後悔しないのだろうか?」

気がつけば翌日にはチケットを購入していた。


大会が近づいてからの購入だったため、座席は3Fだったが、幸運にも最前列で全体をよく見渡せた。

そして、どんなグループがどんなダンスをするのか事前情報を全く持たないまま、華やかなMCの語りと共にコンテストが始まる。

ダンスの技術の高低こそわからなかったが、各チームがこの大会のために並々ならぬ時間をかけて練習し、練度を高めてきたことは素人目にも明らかだった。

途中で気がついたのだが、筆者はどうも4人以上でのダンスパフォーマンスに惹かれる傾向があるようだ。

これは、9人組のRABの影響を受けているのかもしれない。

個性溢れる男女混合4人組Addictive Junction(LOCKING)や、お茶目な5人組Dirstin Jam(HIP HOP)、迫力の8人組RAG POUND(KRUMP)、軽妙なステップの6人組Repoll:FX(Entertainment Be-Bop)のパフォーマンスにとても惹きつけられた。

ブレイキンの分野では、今大会準優勝だった9人組の九州男児新鮮組、筆者でも知っている著名な8人組のMORTAL COMBAT、そして お目当ての5人組Head spin masters(HSM)が出場していた。

HSM以外の二組は、ヘッドスピンを含む様々な高難易度のブレイキンの技を巧みに織り交ぜ、多人数がまるで一つの生き物のように見える息を合わせた演出で素晴らしかった。


会場にあった紹介写真
左奥がムラトミさん

それに対して、HSMはブレイクダンスの多彩な技を封印し、大胆にもヘッドスピン一本に絞るという「シャープトップ戦略」を取っていた。

そのパフォーマンス構成は、4分間、ステージ上の誰かが常にヘッドスピンで回り続けるという、極めてリスクの高いものだった。

しかも何種類ものヘッドスピンを巧みに使い分けるなど、その技の多様性に圧倒された。

会場全体からのドヨメキが、まさに爆烈的だったのも頷ける。

スマホで撮影していたため(SNSに出さねばOK)拍手こそできなかったが、驚異のパフォーマンスに何度も大きな声を上げて応援した。

終盤の5人同時のヘッドスピンという離れ技を見た時には、自分の目が潤んでいるのを感じた。

最難度の技一つにすべてを賭け、観客をここまで引き込むHSMのこだわり、技術力、そして演出力に、ただただ感動し、心を揺さぶられた。

優勝は、咫和巵×無名(HIP HOP)で連覇だった。

入賞こそ逃したが、HSMのパフォーマンスは、紛れもなく観た者すべての記憶に深く刻まれただろう。


少し前までは動画配信で満足していたダンス素人の自分が、こんなに大きなコンテストに一人で足を運び、見慣れないダンスパフォーマンスにも惹かれ、心から楽しんでいる。

ダンスって、なんと奥深く広がりのある世界なのだろうか。


ムラトミさん、様々なジャンルの最高峰のダンスに触れる機会を与えてくれて、ありがとう。

いろんな個人イベントでも、いつもワクワクさせてもらっている。

これからも、推しによって、どんな未知の扉が開かれるのか、心から楽しみにしている。


JDD VOL.30 アーカイブ配信情報:購入期限 9月24日(火)22:00まで

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