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下北沢に不慣れなこと

下北沢、地元が吉祥寺とか武蔵野地域だった人にはわかる、こなれ感。
下北のほうが大人で、拘ってて、知ってる人しか通れない道がたくさんありそうで、カレーもなんかよりスパイシーで難易度が高い。
吉祥寺でいいし。って思って、でもやっぱり格好いいからこっそり詳しくなりたくてもそもそ行っては迷い、ガイドブック上の「下北沢」しか見ることができず、小道には何もなく、気がつくと住宅街に流れ込んでしまい途方にくれてもう帰りたいのに毎回小田急線と井の頭線を間違えて泣きそうになる。

会社の先輩が下北沢でバイトをしていて(彼も私も会社員になっても学生時代のバイト先に居座っているタイプだった。親近感。)、狭くて急な階段を登る喫茶店によく連れて行ってもらった。
そこは下北玄人っぽさがむんむんしている喫茶店だった。
カウンターしかないお好み焼き屋でよく仕事の愚痴を聞いてもらった。

ことを思い出しながら、しかしもう違う喫茶店に着席していた。唯一といっていい自力で入れる店に着席していた。
カウンターに通されウィンナーコーヒーとシナモントースト、いつもの安心するやつを頼む。
ちょっとだけほっとした、ここは知ってるから。

来る前にB&Bで買った、よしもとばななが下北沢のことを書いた薄い冊子を出して、しもきたざわにきました!!!!!!!って思う。
思うけどちょっと恥ずかしくなったけど読む。

隣の席の女の子が、小さい輪っかのピアスがたくさんついた耳たぶ、スピリッツの煙草、カバーを剥きとった文庫本、の、完璧な下北沢の女の子で、あなたこそが下北沢の女の子で、私はちょっと、束の間、お邪魔します。の気持ち。完璧な中央線の女の子だった。
ゆっくりコーヒーを飲んでいた。
燻らせる、本、コーヒー、羨望の眼差し。格好いいなあああ熟れているなああああ。
窓際なのに暗い席にも座ってみたい。

駅に向かう道で先輩に連絡してみた。何年ぶりか。届くかわかんないなと思って送信して、届かなくてもなんか、下北ぽいから、いいやと思ってすぐに返信がきて笑った。何十年経っても下北沢、に溶け込めないかもしれないけど、先輩のこと思い出したから下北沢は好きだと思った。

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