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秋に恋して

「秋が好き」
16歳、学校帰りに幼馴染みと公園で話をしていた。
俺がそう言うと君は
「私は…夏が好き」
と言った。
俺はそれを聞いた時、一瞬恥ずかしくなってしまい余計な一言を言ってしまった。
「え~夏なんて暑いだけじゃん!」
「え?暑い?あ、そっち、か。うん、暑いけど、空は広く明るいし、木々は爽やかだし、楽しいこともいっばいだから…夏が好き」
「ふ~ん。俺も落ち着いた穏やかな感じで過ごしやすいから…秋が好き」
「そっか…じゃあ私は先に帰るね、また明日学校でね、夏」
「うん。じゃあな、また明日な、秋」

俺の名前は、明石夏(あかし なつ)。
そして、
彼女の名前は、爽田秋(さわだ あき)。

「あのさ!」
俺が秋をひき止めると秋は黙ったままこっちを見た。
(ここでちゃんとしないと!)
「俺は!秋が好き!」
「う、うん。だから、分かったよ…」
俺はおもいっきり首をブンブン横にふった。
「違う!俺は爽田秋が好きだ!」

16歳。
生まれて初めての告白。

「私は、・・・夏が好きだから」
「それって…」
「それは、つまり、夏が好きってことよ!」
「だから、それはさ~」
俺が少しあたふたしていると、秋が俺の方を見て舌をべー、としている。
あれをやるときは、ちょっと怒っているか機嫌が悪いかだ。
あー、完全に俺が悪い。
俺がごめん、と駆けよろうとする前に秋が俺の方に駆けよって来て、そして、
そっと俺の手を握った。
だから、俺はその手をそっと握り返した。

俺が好きな秋がこれから始まる……
秋に恋して…



#シロクマ文芸部

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