私の目線と、誰かの目線
父の入院中、印象的な出来事があった。入退院をくり返す父は、もう歩くことも話すこともできなくなっていた。病院は駅前にあったが、私の家からだと往復2時間近くかかる。感染症対策のため、面会時間は15分。受付ではタイマーを渡された。麺が茹であがったときのような「ピピピッ、ピピピッ」という電子音が鳴れば、帰らなくてはならない。今思えば、面会できただけありがたかった。けれど、電車に2時間揺られて見る15分だけの父の顔は、ただ脳裏に焼きつけるしかなく、帰り道にはいろいろと考え込んでしまった