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たまにある誰かが裏で糸を引いているような連鎖の話

できごとの各々はまったく大したこともなく、日常的なものだ。
仕事のキリがよかった。会社の近所に住む先輩からの連絡。一緒に飲む。帰りの地下鉄で知人からの連絡。
なのに、これらがなぜか一本の糸でつながるようなことが起きる。まるで誰かが裏で糸を引いているかのように。

木曜日が祝日なので、同僚の多くは金曜も続けて休暇を取っている。そのせいか水曜の午後から執務室に充満し始めるそわそわ感。つい影響されて仕事のキリも早めにつけたくなる。
雰囲気に流されやすいことにかけては上位数%(母数は何)に常時ランクインする私は、早く仕事を切り上げて会社の隣駅のお店に行こうかと思いをめぐらせ始める。帰路とは反対の方向に1駅乗るのがどうも億劫で、出社が増えた今年も結局行かず、気づけばもう1年ほど遠ざかっている。

あの店を教えてくれたのは、趣味コミュニティの先輩だ。彼は私の会社の近所に生まれ育ち、今も暮らす。仕事柄もあるが飲み食いとその空間を愛する気持ちも強く、そういう観点でのいい飲食店をたくさん知っている。
イースト東京に暮らす私にとって、会社のある西のエリアは、洒落てて小綺麗で何より若い方々の集うところ、私はお呼びじゃない感が強く(すごい偏見)、先輩のように歳も嗜好も近い人が愛用しているお店の情報はとてもありがたい。

で、祝日前日の夕方。仕事のキリ(蹴り?)もつき、久々にあのお店へ行くことを決める。先輩が常連のお店なので一応お邪魔しますくらいは報告しておくか、と思った矢先、先輩から「俺の幼馴染とそちらの社長が近々商談する」という、お互いの知人(勤務先の社長のことを知人と言えるのかは置いといて)が知り合いだった発見連絡が届く。
えっ何このタイミング、と思いつつ先輩へ今日あの店へ行くことを事前報告。結果、(当然と言えば当然だが)一緒に飲むこととなり合流する。

当該のお店はビアバーで、普段は京都醸造や金鬼といったラインナップがメインだ。この夜のメニューには、新卒2年目からしばらく住んでいた茨木市にある(私の暮らしていた頃からだいぶ後にできた)小さなブリュワリーのヴァイツェンが載っている。大阪と言えば泣く子も黙るゴッドファーザーまさじさんの箕面ビールだが、茨木のここのが都内で飲めるなんてというしみじみとした感動。(茨木の暮らしの頃がちょうど岡田さんが阪神の監督でロッテ、いや今で言うマリーンズに負けた年だった。)

前回飲んだ時は、お支払いをしたかが曖昧で翌朝先輩に確認をしたくらいにはまぁまぁ飲むことがお決まりのお店なのだが、今回も似たような感じで、よく飲んでゆっくりしていたら帰りの地下鉄がまさかの乗り換え駅手前で終わりだった。しょうがない、40分歩いて帰ろう気候もいいし、と思っていたら別の知人からメッセージが届く。

知人の住む地域に都内から移転したお店を以前紹介したのだが、そこへようやく行けたという律儀な報告だった。そのお店が都内にある頃によく通っていたのが先輩で、私は先輩から勧めてもらい、でもエリア的にうちからも会社からも微妙に遠くて結局行かないままお店は移転してしまう。
偶然にも知人が住む地域だったので、自分は行ったことがないけれど先輩が気に入ってるなら大丈夫という自信で知人に紹介していた。気に入ってくれたようで、行ったことがないくせに満足感がじわじわと気持ちいい。

とある夕方から夜にかけての数時間で起きた、飲み食いと先輩を核としたこの連鎖。こういうことがたまにあるから、人と話してごはんを食べることに楽しみを見出し、酔っていてもちゃんと記憶しておくことは面白いのよね。

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