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おふくろの味

先日、友人の家で餃子をご馳走になった。旦那さんが中国の大連出身で、粉から水餃子を作ってくれたのだ。もっちりとして信じられないくらい美味しくて、話を聞くと大連では粉から皮を作るのは普通のことで、実家でもお母さんはこのやり方で作っていたのだと教えてくれた。

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粉から餃子を作ったのはモンゴルで遊牧民のゲルにホームステイをした時以来だった。お母さんは器用に色んな形に包んでは「これはお花餃子。こっちは月の餃子。これは羊のお腹餃子ね」とその形の意味を教えてくれた。

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料理上手のお母さんはなんでも粉から作った。うどんのようなものも、焼うどんのようなものも、肉まんのようなものも粉から作った。砂漠や草原の真ん中にあるゲルでは干した羊の肉と野菜と粉という限られた食材しかなかったけれど、どの料理もめちゃくちゃ美味しかった。もう一度あの味を味わうためだけに飛行機に乗って行きたいと思うほどに。

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ホームステイの後に首都のウランバートルのレストランに入って同じような料理を食べたけれど、どのレストランよりもお母さんの作るご飯の方が美味しかった。

思い返すと、どの国に行ってもお母さんの作るご飯でまずいというものには出会ったことがない。レストランは良し悪しがあって、イギリス留学中に入ったパスタ屋さんのパスタは缶詰のトマトソースの味しかしなくてガーンとなったりしたけど(イギリスの名誉のために言っておくと、イギリスでもおいしいレストランはちゃんと美味しい。)、それでも週末にホームステイさせてもらったイギリスの田舎のおばあちゃんの作るスコーンや、ポテト料理はやっぱり美味しかった。

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タンザニア で作ってもらったウガリやチキンのトマト煮の味も忘れられない。作り方を聞いてきて、日本で何度も作ってみたけれどウガリはあんなにフワフワにはならないし、あの味にもならない。

お金と時間を自由にあげるからなんでも好きなものを食べに行けるのだとしたら、何がいい?と聞かれたら私はきっとこれまで訪れた国のどこかのお母さんの料理を選ぶと思う。お母さんの作るごはんはどこの国に行っても本当に美味しいのだ。それってすごいことだと思う。

私はあんまり料理は上手じゃないけれど、いつか子どもたちが飛行機に乗ってでも食べに帰ってきたいと思える料理を作れるようになりたいなと思っている。

そして私自身も死ぬ前に一つ何が食べたい?と聞かれたら間違いなく自分の母親が作ったコロッケかポテトサラダと答えるだろう(一つじゃないんかい)。

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