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家を買う(18) 引っ越し

 昨年8月、ついに新居へ引っ越し。

 わたしは20代はじめから30代半ばまで賃貸マンションを何度も移ったが、引っ越しはだいたい不動産屋さんが紹介してくれる安いところに頼んでいた。荷造りはひとつ残らず全て自分でやって、搬出運搬搬入のみ引っ越し屋さんに頼む形。3万円あったらお釣りが来る料金でできた。

 ただ、安いところを使っていたせいか、作業員のマナーの悪さが目立って、いつぞやの引っ越しの時なんか、事前の掃除がきちんとできなかったから大きい家具を動かしたとたんホコリや汚れがあらわになり、作業員がわたしに聞こえるボリュームで「うわっ!きったね…」とこぼしたことがあり、やや傷ついたのだった。

 今回はそういう思いをしないため、ちゃんとしたところを使おうと思って、評判のいい大手に頼んだ。料金は早めの予約割引分を引いてもこれまでの3倍はしたんだけど、荷造りがラクになる資材の貸し出しがあったし、食器は作業員がやってくれるということだし、もう引っ越しすることもないかなと思ったらまあいいかと。

 そして引っ越し当日。きっと安心安定のおじさん作業員が来るんだろうなと思ってたら思いっきり違った。

 現れたのはどう見ても20代の細マッチョイケメン作業員3名…!想像してたんと違う!

 最近は引っ越し屋さんも顔で採用してるんですか(コラ)。いや、いいのよ。作業中無駄な私語はしないし、若いだけあってテキパキ進むんだけどさ…目のやり場に困るって。程よく筋肉のついた腕、アイドルのようにきれいな顔。眩しすぎるよ君ら。

 どぎまぎしながら運び出すものをすべて伝え、持って行ってもらう。手際がよく、あっという間に搬出は済んだ。引っ越し屋さんのトラックには先に新居に行ってもらって、わたしはさっと掃き掃除をしたあと、タクシーで追った。

 新居に着いたら引っ越し屋さんはもう着いていたので先に部屋に入り、荷物を搬入してもらう。大きな家具は配置を決めてあったので指示して運んでもらって、段ボール(20個くらいだったかな?)は1ヶ所にまとめて置いてもらった。これまで住んでいた部屋よりかなり広いので、しばらくそのままでも邪魔になることはない。

 とはいえ、今すぐに出さないと困るものがあるので、ちょっとだけ荷ほどきしようと手をつけたら夢中になってしまい、結局深夜までかかって段ボール残り3箱というところまで片つけてしまった。開けなかった段ボールはウォークインクローゼットに入れて就寝。

 明けて翌日、もと住んでいた賃貸マンションの引き渡しをしに行った。管理会社の人が来るまでに掃除をして、残った荷物をまとめた。この部屋にはなんだかんだ7年も住んだ。住人の質が悪いこと以外は気に入っていただけに、いざ引き払うとなったらかなり切ない気持ちになった。

 管理会社の人が来て、部屋の中を点検する。使ってるうちにちょっとだけ壁紙が剥がれたところや汚れたところもあったけど、長く住んだからということで、敷金のほとんどは戻ってきた。鍵を全て返して、バケツやらほうきやらを抱えて部屋を後にした。

 旧居と新居の間は地下鉄で2駅だけど、この状態で駅まで歩くというのが面倒で、すぐそばにあるタクシー会社から車を出してもらって移動。この町にも長く住んだなあ。辛い思い出もあるけどいい町だった。タクシーの運ちゃんが「また機会があったら…」とタクシーカードをくれたけど、きっともう乗ることはないだろうなあ。

 これまで賃貸で我慢しただけ、分譲の新居での暮らしは幸せなものになるといいなあと願った。そんな願いも今思えば「脳内お花畑か!」と自分を叱責したくなるほどのんきなものだった。

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