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家を買う(19) やっと耳鼻科に

 引っ越しも一段落ついて、ようやっと耳鼻科に行くことになった。なんで耳鼻科かと言うと、前住んでいた賃貸でわたしはひどい騒音に悩まされていて、毎晩毎晩耳栓を突っ込んで就寝していた結果、ひどい外耳炎に悩まされることになっていたのだった(詳しくはこちら)。

 耳の中が炎症を起こしてものすごく痒くなり、耳だれが出るようになり、だけど眠るためには耳栓を手放せず、そしてその部屋に住み続ける限り、医者に行って治療したとしてもまた耳栓突っ込むんだからと思って、マンションを移るまでは受診できなかったのだ。引っ越しの数日前にはついに固まった耳垢(膿かな?)が鼓膜の上に覆い被さったらしく、片耳だけあまり音が聞こえない状態になってしまった。

 放置していた症状をようやっと診てもらうときってすごく怖い。「まだ我慢できる」と思って放っておいた体で病院に行くと、だいたい先生に「なんでこんなになるまで放っておいたんだ!」って叱られるじゃない? 自業自得なんだけど、今回はどうしようもなかった。

 近所で、なおかつ評判の良さそうな耳鼻科を調べておそるおそる受診した。どんな罵詈雑言が飛んでくるか震えながら診察室に入り、症状とこれまでのいきさつを話した。さあ来い。どんな言葉でも覚悟はできているぞ。

 すると先生は、怒るでもなく、むしろ優しい声で「そうですかー。そりゃあ大変だったよねー」と返してくれたのだ。横にいる看護師さんも親身になってくれた。あれ? ここは天国かな? ついに死んだかな?

 これまで、耳の炎症やら不眠やら疲労やらに打ちのめされて、その上マンションを買うにあたって、生きるか死ぬかくらいの重大な決断をいくつもしてきて瀕死の状態になった精神に、先生や看護師さんの優しい言葉が沁みた。大げさかもしれないけど、わたし生きててもいいんだって思ったもん。

 それから、先生の指示のまま横になって、両耳をカメラで見てもらい、詰まっている耳垢も吸引で取ってもらったら、音がクリアに聞こえるようになった。少し症状が治まっている状態で行ったので、点耳薬なども出ることはなく、また調子が悪くなったら来てねとのこと。

 マンションを探し始める前に発症して、引っ越しが終わるまでおよそ1年、こんな症状で苦しんでいたのだ。ほんとうに何やってるんだって感じだけど、こればっかりは仕方なかった。

 すっきりしたその足でホームセンターに行って、新生活に必要なものをいくつか買い足した。自分の好みに作り上げた部屋で始まる生活は楽しいに違いない。その日は天気もよくて、ひさしぶりに晴れ晴れした気分で過ごすことができた。

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