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算数みたいには割り切れないから【群青日和 #49】

【試合結果】
5/30(水) 東北楽天ゴールデンイーグルス
●5-6
[勝]藤井
[敗]石田健
[S]則本

◇ ◇ ◇

遠方にお住まいのとあるお世話になった方が、ご家族一同でハマスタへ観戦に来ると先月末に連絡があった。
お年を召した義理のお母様、ご兄弟とともにはるばる数時間かけて横浜にいらっしゃるという。天候のことを少々心配されていたが、
「一番ひどかった日(火曜日にケイが先発したあの日)以上に荒れることも無さそうなので行きます」
と追って連絡があったのが一昨日。

このカードは現地観戦の予定は入れていなかったものの、せっかくこちらにいらっしゃるのであれば是非ひと目お会いしたい。
そう思って一言連絡を入れると、仕事を終えてすぐにぱぱっと身支度をして家を出た。
在宅勤務の日でよかった。

◇ ◇ ◇

試合があるのにスタジアムの近くまで来て、中まで入らないのは少し不思議な気分になる。イニング間イベントの音楽や聴こえてくるラッパの音色で、おおよその試合の進行具合が分かるのが面白い。

横浜公園に入り、ちょうどバックスクリーン裏にあたる場所近くの花壇のふちに腰を下ろす。
向かって左側がライトスタンド、右側がレフトスタンド。
どっちが盛り上がるかで打ったのか、打たれたのかがすぐに伝わってくる。

宮﨑が2打席連続でホームランを放った7回裏の盛り上がりは、すごかった。
公園中に歓声がうわあああっと広がって、空気がびりびり震えていた。

5月6日、筒香が復帰して逆転スリーランホームランを放ったあの時。
ハマスタの大歓声が1.4km先の野毛山公園付近まで届いたという話を聞いたけれど、あれは本当だったんだなと身をもって理解する。

万単位での人の声は、わりと遠くまで届く。
それは喜びの声だけじゃなくて、悲しみや怒りの声も同じこと。

7回表に伊勢が打たれた時。
9回裏に蝦名、森敬斗が続けて初球で打ち取られた時。

なかなか、耳の奥に残る落胆の波音だった。

◇ ◇ ◇

「途中まではね、なかなか苦しかったんだけど。でも宮﨑さんの2本目のおかげで、もしかして!?ってちょっと思えたわ!」

予定されていたグラウンド解放のイベントが中止となり、遠方からいらしていたその方と試合後すぐにお会いすることになった。
この三日間配布されていた、交流戦限定のTシャツをもう着てらしゃる。
試合だけ、他は何もなくただ敗戦の記憶のみというのは、なかなか観戦が叶わない方々にとっては少々よすがというものが無さすぎる。
こうして負けてしまった試合でも、思い出に残るシーンだけでなく何か手元に残るものがあって良かった。

お目当ての選手が出なくても、別の活躍した選手に目を向けてみたり。
チームが負けても、明日に繋がるプレーを見せてくれた選手に希望を託してみたり。

当然勝敗のある競技なので、結果がすべてではあるのだけれど。
そこに至る道のりをどう受け取って楽しむかは、ファンに許された自由なのかもしれない。

一試合の重みもまた、人それぞれだから。

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