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僕は見たよ 僕らだけの光【群青日和 #33】

【試合結果】
5/10(金) 阪神タイガース
●3-4
[勝]岩崎
[敗]森原
[S]ゲラ

◇ ◇ ◇

誰にも過失がない、真剣勝負の中で起こったことにいつまでも心を留め置いてはいけないのだけれど、ショッキングな光景はどうしたって目に焼きついてしまっている訳で。
じゃあどうしたら、とずっとずっと考えていた。

彼がグラウンドを去った後、空いたサードにはショートの京田が入り、今季初昇格していた森敬斗がショートに入る。
ショートが本職の京田にUTとしてサード、ファースト守備をやってもらっていた流れがこういう時に活きてくる。こういう時、にこんな一大事は含まれていて欲しくはないんだが。

サードベース付近に蹲った姿、ブルーの囲いの残像がまだ目の奥に残っていてちょっと心が戻ってこないままに、6回の表が終わる。
で、何点失点したんだっけ?

本当に偶然にも、5番の打順から始まる攻撃回だった。
明日以降も森敬斗が出るとしても、きっとこの打順にはならないだろう。

最後に見たのは4月30日の横須賀スタジアムでの姿。
去年より全体的にひとまわりがっしりして、ずいぶん落ち着いて締まった表情になった。
プロ入り5年目、高卒選手にとって同い年の大卒ルーキーが入ってくるこの年は「勝負の一年」なんて言われることが多い。
森敬斗の2024年シーズンは、どんな一歩を踏み出すのか。

沈むようなボールを掬い上げて、崎陽軒の広告方向へ。
右中間を破る当たり、普通の選手ならツーベースヒットの当たりをもうひとつ先まで狙えるのが森敬斗だ。
まだ外野からボールが戻らないうちに二塁を蹴り、三塁へ滑り込む。
今季初打席の結果は、スリーベースヒット。

心配、不安、焦り、恐怖。
前のイニングで立ち込めてしまったどうしようもなく重くて暗い雲を振り払うような、鮮やかな光。

そういえば2年前、怪我明けで復帰してきたのも阪神タイガース戦だった。
しかも当時の相手先発投手も青柳。明日の予告先発が伊藤将司ってとこまで同じじゃないか。

「チームの状況、チームの雰囲気がどうであれ、いつも自分は光り続けていたいと思ってるんです。それによって、みんなをどんどん光らせていきたい。ぼくの立場で言うのはちょっと、上からみたいな表現になってしまうんですけど……。自分が発した光をどんどん全体につなげていく、そういうイメージを持っています」

以前、ベイスターズの選手はそれぞれがパーソナルスローガンなるものを掲げていた。選手が大事にしている言葉を各々で考え、ホームユニフォームの首元にそれが刻まれ皆が背負う、といった試みだ。

森敬斗が掲げていた言葉は「KEEP SHINING EVEN IN THE DARK」。
暗闇の中でも輝き続ける。

きっと今もこの言葉を胸にグラウンドに立っているんじゃないか?
私は今、真っ暗な気持ちを抱えながらも確かに、森敬斗の打って走る姿が光って見えた。

どんな形であれ巡ってきたチャンスで、ワンプレーでぱっと暗闇を照らした。
そして自分が発した光をどんどん全体につなげていく、その言葉通りに彼が放った光は筒香が、京田が繋いだ。

こんな事が起きた日だ。
そりゃあ、勝ちたかった。
でも相手が居ることだから全てが上手くいくはずもなく。

それでも私は、森敬斗が見せてくれた光を抱いて前を向くよ。
だって明日も試合があるから。

◇ ◇ ◇

どうか、元気な姿でハマスタに帰ってきてください。
待ってます。


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