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もう一人のクローザーが帰ってきた日に

【試合結果】
9/18(土) 広島カープ戦
○4-2
[勝]砂田
[敗]塹江
[S]山﨑


試合前、スタメン発表の時点で
「本日、三嶋はベンチ外」
と既にアナウンスがされていた。

3日前の敗戦もあり、調整やリフレッシュを鑑みての事だろう。

※詳細はこの記事にて

今シーズン7回に登板する事が多かったエスコバーが8回に登板し、twitter上のファン達が「もしかしてこれは9回に山﨑康晃か…?」とにわかにざわつき始めた。
広島主催試合はDAZN中継が無いため、情報が来るのが少々遅い。
と、サンスポベイスターズ担当さんのtwitterにこんな投稿が。


2015年、当時ルーキーにして大抜擢を受けクローザーに就いた山﨑。
翌シーズン以降もその地位を不動のものとし、横浜の小さな大魔神として君臨し続けた。9回の裏、セーブシチュエーションのハマスタにはいつも「ヤスアキジャンプ」が響き渡る。

他球団ファンの知り合いは
「ハマスタは負け試合でもヤスアキジャンプが見られたらまあええわってなるな」
なんて言ったりしていた。
それぐらい、クローザー山﨑康晃という存在が象徴的だったのだろう。


しかし、昨シーズンの山﨑は苦しみ抜いていた。
本来の力が出しきれず、ストレートとツーシームのツーサイドピッチが全く通用しなくなっていた。勝てた試合を幾度も落とし、自己ワーストの防御率.568を記録する文字通りの大不振。そんな悩める5年目の守護神を救ったのが、当時セットアッパーとして投げていた三嶋だ。
シーズン半ばの7月より山﨑に代わり、結果として18セーブを挙げた。

取って代わられた形、というようにも見えるが二人は互いをリスペクトし合っていると常に公言していた。特に印象的だったのが、サンスポ特別編集紙「BAY⭐︎スタ」第21号に載っていたインタビュー。

—三嶋投手にとって後輩・山﨑投手の存在は

 「これは彼の人柄というか、ずっとクローザーをやってきて、やっぱり歯がゆい思いとか色々な感情はあると思う。でも、僕が投げているときに一番声を出してくれるのはヤスなんです。聞こえてくるんですよね、マウンドで」

先輩・後輩という関係を越え、彼らは互いにひとりのアスリート同士としての純粋な尊敬があった。そこには起用法の違いやチーム状況といった要素からは少し離れた所に、確かに存在していたのだ。

そして常に二人とも「与えられたポジションでしっかり仕事を全うする」と口にしていた。

今日、山﨑康晃は9回のマウンドに帰ってきた。
13球でアウト3つを掴み取り、その役目をきっちりと終えた。
今シーズン初、実に431日振りのセーブ記録だった。

試合後、三浦監督より正式に三嶋・山﨑両投手の配置転換が明言された。
既に本人には一昨日伝えたとの事。

あちこちで色々と言われてはいるが、結果としてはこれで良いのだと思う。
特定のチームに対して悪い状態を修正しきれず、幾度も勝ち星を失う事で苦しんでいたのは三嶋本人だ。
無論、チームやファンも苦しんできたのには変わりないのだが。
当たり前の話ではあるが、プロアスリートも一人の人間として精神を宿している。
起用と期待に応えられない現状とそれでもやってくるプレイボールの間で、ずっと苦しみ抜いたはずだ。
こうしてスパッと指揮官から配置換えを明言される事で、新たな立場でもう一度自分を磨き直そう、と思えるタイプの人間もいる。

どちらのクローザーも、互いの苦しみを理解し合い支え合ってきた。
今後の二人がどのような未来を辿ろうともこの2年の間、ベイスターズには背中を預け合う二人のクローザーが居た事は確かな事実だ。
そして、今もその二人を見つめているチームメイト達が居る。

三嶋と山﨑。
この二人の存在は今までの勝ち試合、そしてこれからのベイスターズをマウンドに立つその背中で守り、創ってくれているのだろう。


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