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I've Been Waiting 【群青日和 #43】

【試合結果】
5/23(木) 東京ヤクルトスワローズ
◯5-3
[勝]石田健
[敗]高橋
[S]森原

◇ ◇ ◇

主将・牧秀悟がケガにより登録抹消となり、チームを離れて3日目。
ここ2日間のスターティングオーダーは、彼が空けていった4番の欄に筒香嘉智の名前が入っていた。だが、今日はどうやら筒香はベンチスタートらしい。
では一体誰が?
SNSにアップされていたオーダー用紙の、上から4段目に目を向ける。
4番、その右側にはタイラー・オースティンの名前が書かれていた。
スワローズの先発、サウスポーの高橋奎二は左右の被打率が結構ハッキリ分かれていて、実際右打者に対しての数字があまり思わしくないのもあってこの起用なんだろう。毎度毎度、左投手だから右打者!と極端なことをやるタイプの首脳陣ではないので、その他の有益なデータも揃った上での判断ならなお良い。

実際、牧を欠いた上でさらに筒香を除いたとしても、クリーンナップに揃うオースティン、佐野、宮﨑の3人は4番打者経験がある(改めてすごいメンツだ)。
その中で一番長打力があって状態が上向いている右打者を選ぶならやっぱりオースティン、になるんだろうな。

4試合連続で長打もありつつずっとヒットが出ていたし、カード初戦を現地で見た時ももう少しでフェンスオーバー、そんな当たりも何本もあった。

そしていざ試合が始まってみれば、そこには期待以上に完全な『4番・オースティン』が神宮球場に君臨していた。

そこまでフルスイングには見えないのに、何かが破裂したような打球音、ピンポン玉みたいにすっとんでいく白球。
そういやオースティンのホームランって、こんな感じだったね。

結果だけ先にお伝えすれば、このホームランを含めて5打数3安打3打点。
紛れもなく、チームを勝たせる4番打者の働きそのもの。

日替わりヒーローで、キャプテンの不在を支えている。

◇ ◇ ◇

あれ、こんなパフォーマンスしてたっけな。
それは5回表、オースティンがタイムリーツーベースを放った時のこと。

塁上のオースティンは右手の人差し指と中指を揃え、2本の指で左胸をトントン、と叩いて何かを示している。これは初めて見るなあ。何か意味を込めているのかしら。

その後も打線が繋がり、大和が犠牲フライを決めてさらに追加点となったところで、あれもしかして……と思い至った。

オースティンが指し示していたのって、ちょうどキャプテンマークのワッペンがある所じゃない?
もしかしてあのパフォーマンスは、「俺達はいつでもキャプテンと共に戦っているよ」って言いたいんじゃない?

すぐに、3年前に見た球団公式YouTubeの動画を思い出す。
牧が新人特別賞を受賞した際に作られたもので、監督・コーチやチームメイトが彼について話す、といった内容になっているのだけど、そこでオースティンは牧のことをこんな風に語っていた。

「彼の代わりはいません。最初からこのチームを背負って、毎日全力で試合に臨んでいました。チーム全員が牧になって欲しいと思うくらい。最高のチームメイトです」

動画内(3:07〜)より引用

新人とは思えない成績を積み重ね、一軍の舞台で活躍し続けるこのNPBのスーパールーキーに対して、MLBの第一線に居た選手がこれ以上ない賛辞を向けている。はっきりと、「彼の代わりはいない」と言い切っている。
当たり前の話だけど、この時点で牧とオースティンはまだ2021年シーズンの1年間しか共に過ごしていないわけで。

何よりこのシーズンは球団の不手際により、外国人選手の入国が遅れていた。
牧秀悟はルーキーで開幕一軍抜擢、だけでなく想定外に空いてしまったファーストのポジション、そしてクリーンナップの一角、この両方を担うことになってしまった。そして、全力でやり切った。
オースティンの言葉通りに、間違いなく牧は1年目からこのチームを背負う選手になっていた。

出会って最初のシーズンから牧秀悟に対してこんなにも敬意を払い、最高のチームメイトだと語っているオースティンの気持ちを思えば、やっぱり今回の塁上パフォーマンスはなおさら牧に向けたものに見えてくる。

実際の所は直接本人に聞かない限り真意の程は分からない、けれども

私が知っているタイラー・オースティンは、そういう熱いハートの持ち主なんだよね。

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