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歓声背に受け ダイヤモンド駆け抜けろ【群青日和 #50】

【試合結果】
5/31(金) 北海道日本ハムファイターズ
○4-3
[勝]森原
[敗]河野
[S]ウィック

◇ ◇ ◇

その姿勢は、変えずに貫いてきた。

しっかりとバットを振ること。

打った後、すぐにその先へ向かう意志を持つこと。

一軍に上がって来てから、いやその前からずっと、森敬斗がやり続けてきたこと。

そして、左投手に対しての課題。
どうしても苦手にしていて極端な打率の差が出ていたこともあり、勝負所では代打を出されることも多かった。

それでも、森敬斗は起用された試合では強くバットを振ることを止めなかった。
取り組み始めたことを簡単に変えてしまうより、身につくまで貫いて欲しい。
勝手にそう思ってこちらも見つめ続けていた。

長く球を見て、振り抜く。
少しずつ、左投手を相手にした時もヒットが出始める。

楽天戦、最後の試合。
第一打席でツーベースヒットを放った。
相手先発の藤井はサウスポー。
一軍で左投手から長打を放ったのは、おそらく初めてのこと。
もう、きっとヒーローになるのはすぐ先の未来の話なんじゃないか?
そう予感させる一打。

◇ ◇ ◇

「そんな打ち方出来るなら最初からやってくれ〜!」

そんな一言を見かけた。

そうじゃない。
強く振ることを変えずに来たから、コンタクトに徹するバッティングの引き出しも同時に増えただけのこと。ずっと合わせるようなスイングでは、振り抜くことは身に付かない。

一瞬で結果が出てしまう競技だから、つい目の前で起きたことが全てだと感じてしまうのは仕方の無いことではある。
でも私はここで何度でも言うけれど、選手を見つめる時は点ではなく、線で見つめていたいんです。

その場で出なかった結果に合わせて発せられる溜息に引っ張られず、一打席一打席準備して、やり切って。

一瞬の積み重ねが出たのが、今日の勝負所だった。
それだけのことだけど、本人にとっては「それだけ」と思って欲しくはない。

それに、一人きりで準備してきた訳じゃないのも知っているから。

雨で試合中断があった日も、為す術なく完封負けを食らった日も、そして今日の試合前も。
石井琢朗コーチのそばにはいつも森敬斗の姿があった。

身振り手振りからして、ずっと打撃に関する疑問や感じたことを問い続けているのが分かる。
腕をバットに見立てて、球に対してどう出すか、そんな感じだ。
そして、チームメイトが打撃練習に取り組む間はその打球を無駄にはせず、打球判断の練習に黙々と取り組む。

これを毎試合、続けてきた。

親子のような、師弟のような二人。

森敬斗の姿に若き石井琢朗に抱いた希望を重ねてか、二人の応援歌には似たようなフレーズが使われている。

「駆け抜ける(駆け抜けろ)」
「スタジアム」

打って、ダイヤモンドを駆け抜けて。
その背に大歓声を受ける日をずっと待っていた。

真っ青に染まった三塁側は、一体どんな風にその瞳に写ったかな。

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