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この手で掴み取るだけさ 【群青日和 #7】

【試合結果】
4/5(金) 読売ジャイアンツ
◯2-1
[勝]東
[敗]戸郷
[S]山﨑


◇ ◇ ◇

ああ今日は失敗した……。

家を一歩出るなり、頭の中で独り呟く。
そんなに大した話じゃない。
春先の服装選びはギャンブルのようになってしまう、そして本日はその賭けにしっかり負けた、というだけ。
前日に天気予報を見て、明日の服装を決めておいてからベッドに潜ればいいだけなのに、毎日そのどちらもを丁寧に放り投げてしまうんだから、全くもって生活に対して非常に不真面目この上ない。
生きる姿勢としては真面目寄りに生きているつもりなんだけど、何事もやっているつもりになっている側の人間は不真面目以外の何者でもない。

ともかく、気温に対して少々薄着で出てきてしまった。
昨日はあんなに暖かかったのに……
今まさに春は来たれり!と言わんばかりにあちこちで花開いているソメイヨシノも急に寒くなられて、えっ聞いてないんですけど?と戸惑っていることだろう。
わかる〜、私も私も。

通勤電車に揺られている間はまだいい、電車を降りて会社に向かうおよそ5分以上10分未満のあの時間は心を無にして競歩並みの速さで歩むほかない。
寒いという感情を振り切るのに必要なのは、コンビニで買ったほうじ茶と移動スピード。
毎度毎度ベストな過程を選べるわけじゃない。最初を間違えたとしても、ベターにベターを重ねていけばベストな結果に終われずとも、納得のいく終わり方は選べる。


◇ ◇ ◇

対戦相手の戸郷翔征、そしてベイスターズの東克樹、開幕投手同士の対戦なので、点の取り合いみたいな大味な試合にはまずならないだろう、と踏んでいた。
なにせ二人とも昨シーズン二桁以上勝利投手ですから。
彼らが投げている間は、大崩れして相手のビッグイニングになる姿がどうも想像できない。
特に戸郷は昨季から続く記録として、試合前の時点で40イニング連続無失点を続けている。

東と戸郷、本拠地で迎える開幕戦をそれぞれ任せられた投手。
先週の結果は東には勝ち負けが付かず、戸郷は勝利投手になっていた。
さて今日はどうなるか。

去年のとんでもなく良い状態を知っている身としては今日の東は
「先週より良いけど、良いかと言われると普通」
って感じだ。工藤解説員曰く、制球の問題。
左打者に対して投じるインコースの球が球種を色々変えどもなかなか決まりきらない。かと思えば、慎重に行きたい場面でボール半個程ズレて甘く入り、ヒットを許してしまう。2回裏、先頭打者の岡本に対してのピッチングがまさにそうだった。
結局その回のうちに失点してしまうが、そこで「行けるぞ」と相手に思わせないのが東克樹だ。

何をどう変えた、と素人の私には明確には分からないけども、その回以降の東は
良い意味で厳しく行きすぎない
自分の力で取れるアウトは全力で取る
この2つがグッと強くなったように感じた。

元々反射神経も良くフィールディングも抜群なピッチャーではあるけれど、今日は特に集中し、冴えていた。

6回表ではチームと自身を助けるべく、ツーベースを打った林を送りバントで進塁させ、同点機に貢献。
その裏の回も全力で3つのアウトを取り、7回1失点でこの試合をまとめ上げた。

かつて、福岡ソフトバンクホークスの斉藤和巳が「負けないエース」と呼ばれていた。自分が投げる日はチームを勝たせる、という自負は自身の調子に関係なく常に彼の中にあり、それが結果として表に出てきていたんだろう。

私は、東もそんな「負けないエース」だと思っている。
ルーキーイヤーで鮮烈なデビューを果たし、トミー・ジョン手術からのリハビリを乗り越え、昨シーズンは最多勝・勝率一位・ベストナイン・ゴールデングラブ賞を獲得。

どん底も栄光も知っているから、ウチの左腕エースは強いんですよ。

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