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是が非でも 踏み込もう【群青日和 #15】

【試合結果】
4/16(火) 広島東洋カープ
●2-11
[勝]床田
[敗]ジャクソン


◇ ◇ ◇

こんな試合はそう何回も続かんだろう、1日休みを挟んでまた切り替えてくれればいいや〜

なんて思ったのがつい2日前の話で。
続いちゃうのもまた野球。

◇ ◇ ◇

じゃあ一昨日と同じく何もできなかったかというと、決してそんな事は無く。
一昨日は「0」と記されていた場所に、今日はしっかり「2」と刻まれた。

「0」から「1」にひとつ進める力はシンプルだけど、誰もが出来ることじゃない。
まったく何も無いところから何かを生み出す力、それは小さな小さな積み重ねを続けられる力でもある。本人だけに分かるようなほんのわずかな、1日1日では変化なんて全然見えないような差を積み重ねる作業。
0.1でも、0.01でも、とにかく積み重ね続ける。
いつかそれが「1」に届くまで、その手を止めない。

私は宮﨑敏郎の背中から、「0」を「1」に変える力を感じている。

プロ野球選手として過ごしてきた11年のうち、打率3割越えのシーズンが6回。
うち、首位打者に輝いたのが2017年と2023年の2回。
大社卒のプロ野球選手に与えられた時間はどうしても短くなるけれど、宮﨑の姿勢に焦りのような急いた印象はまったく感じられない。

一度見たらまず忘れない、左足のつま先だけをちょこんと地面に着けて、右足にしっかり重心を乗せる構え。
柔らかくて強い手首を生かし、余計な動作が省かれヘッドがびゅんと走るスイング。
同じ構え、同じスイング。
年々少しずつ、本当に少しずつ変えていると思うのだけど、根幹の部分は変わらない。

変えずに続ける勇気。
これが正しいと信じて目立たない努力を積んでいける力が、「0」を「1」に変える力なんじゃないか。
ゼロはどこまで行ってもゼロ。
何もしなければ、何の変化もなく前進もない。
成功も失敗も続けなければ分からないってことでもある。

通算4257安打という世界記録を成し遂げたイチローは、かつてこんな言葉を残していた。

小さいことを積み重ねることが、とんでもない所に辿り着く ただひとつの道

今日みたいに、もうどうしたらいいか分からないな、なんて途方に暮れそうになる時にこそ、改めて宮﨑のその一振りに凄みを感じる。

彼はいつも、打っても打てなくてもあまり表情を変えることは無い。
だから好調なのか不調なのかもなかなか、分かりにくい。
というか、驚くことに絶好調の日はあれど絶不調の日ってなかなか無いのですよ、この人は。

ああちょっともう今日は重たいな、厳しいな、なんて気持ちでこちらが彼らを見つめてしまう日でも、
「いや自分のやる事は変わんないんで」
って言っているような。

どんな状況でも放たれる宮﨑の一打から、今まで振ってきたバットの回数、打ち返してきたボールの数の重みを感じる。
変わっていくものばかりの世界で、自分を見失わずにやり続ける力。

無理して上なんて向かなくていい。

ただ、続けよう。

◇ ◇ ◇

4月16日、午後2時25分。
もう一人、続けることの意味を知る人が帰ってきたという報せがあった。

おかえり。

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