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真ん中じゃなく 理想に近い【群青日和 #38】

【試合結果】
5/17(金) 中日ドラゴンズ
◯2-1
[勝]東
[敗]涌井
[S]森原

◇ ◇ ◇

38試合を終えて、ここまで大きな連敗無くチームが踏ん張れているのは間違いなく今日の先発、東克樹のおかげだと言える。結構強めに言える。

大洋ホエールズ時代のエース、遠藤一彦氏が記録していた本拠地10連勝の記録、そして斉藤明夫氏に並ぶ開幕投手からの4連勝、この2つの記録が掛かった試合だったが、今日も東は負けなかった。
これで今日の試合を含め、公式戦18試合連続でQS(6回以上投げて自責点3点以内に抑えること)も達成。

「絶対自分で連敗を止めてやるという強い気持ちでマウンドに上がった。個人の記録もかかっていたので絶対に勝ちたかった」

身長170cmとプロ野球界の投手としては結構小柄な体格に割とベビーフェイスな顔立ちをしているので、笑顔の写真なんかを見ると親しみやすく可愛らしい雰囲気に見えるのだけど、ひとたび試合が始まると纏う雰囲気ががらりと変わる。

テンポ良くゾーンに投げ込み、ストライク先行、WHIP(1イニングあたりに出す走者)も1.11と逃げないピッチングを軸にアウトを重ねていく。
特に右バッターに対しては膝下に鋭く落ちる変化量の多いスイーパー、左バッターに対しては外角に逃げていくように変化しながら減速するチェンジアップが決め球として印象に残る。本当に再現性が高いので、まるで野球ゲームを操作しているみたいに思えてしまう。

時にそれを逆手に取られて浅いカウントから連打を食らうこともあるけれど、ゾーン内で勝負するということはそういうリスクも孕んでいるわけで。
仮にそうなったとしても東は、最小失点と引き換えにでもゲームを壊さない。
自分が先発した以上は1イニングでも多く、とマウンドに上がり続ける。

絶対にチームを負けさせない、という気迫がバックを守る野手達にも伝わるのか、東が先発する日は不思議と守備の好プレーをよく見る気がするのは私だけだろうか。

昨年16勝をマークし、最多勝投手としてシーズンを終えた後の契約更改ではこんなコメントを残した。

「重圧を感じてダメになれば、それまでの選手。それに打ち勝って成績を残してこそ、本物のエースに近づける」

週末はカード頭になるので多くの球団が「まずはここで一勝できる投手を」とエース級投手をぶつけてくる。その中で彼は開幕からずっと、この金曜日の登板ローテーションを守り続けている。
開幕投手として東を指名した三浦監督も、それをただ見守るファンである私も、横浜DeNAベイスターズを背負う左腕エースは間違いなく東克樹だと思っている。
それでも東は東自身を、まだ本物のエースだとは認めていない。

「エースになるには、先制点を取られないとかイニング途中で代わらないとか、まだできてない。それを何年もできてこそエースになると思う」

まだ東克樹は上を目指せるし、もっともっと勝ちを重ねられる、と本人が思っている。私もそう思う。

見ているだけのこちらとしては「いつもすまんなあ……」なんて気持ちにもなってしまうけれど、同時に「東が先発する日はみんなで絶対勝とう!」という思いも心の真ん中に湧いてくる。
絶対勝たなきゃ、というプレッシャーというより、ベイスターズには東克樹というエースがついてるから、という希望に近い。

かつて横浜の背番号21を着けていた、遠く離れたシカゴの地で躍動する彼がいないから……と開幕前に何回も何回もあちこちで聞かされて、正直ちょっとうんざりしていた。

今の横浜DeNAベイスターズには、背番号11の負けないエース、東克樹がついている。

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