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誰も知らない、タイの[絶景]チャオラン湖|旅行記

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水面から突き出る岩山の凄美な景色を、中国の都市になぞらえ「タイの桂林」と称した湖がタイ南部スラタ二県にあることをご存知だろうか。

その巨大なタワーカルストは、綺麗な海ばかりが取り沙汰されがちなタイの自然の、また違った一面を私たちに見せてくれる。タイ政府観光庁の言葉を借りるなら、まさしく「こんなタイ、知らなかった」だ。

チャオラン湖|タイ南部スラタニ県

ジャングルからチャオラン湖へ

2020年、恒例となっている年末年始のタイ旅行で、私たちはスラタ二県の《カオソック国立公園》を訪れていた。世界最古の熱帯雨林のひとつに数えられるこのジャングルで、私たちはラフレシアや野生のスローロリスと出会い、旅の締めくくりとなる最後の目的地が《チャオラン湖》だった。

カニクイザル|カオソック国立公園

早朝カオソックのジャングルを出発、ホテルのフロントで聞いたチャオラン湖への行き方は今いちよく分からなかったけれど(いつものことである)、ロットゥー(乗合バン)やタクシーを乗り継いで、昼頃にはチャオラン湖のほとりに辿り着くことができた。

おそらくコロナせいだろう観光客の姿は少なく、曇り空に緑青に鈍る湖面には幾艘ものロングテイルボートが大人しく係留されていた。

チャオラン湖の船着場

湖を見下ろす小さなレストラン《BAIPAD》がホテルスタッフとの待ち合わせ場所である。今日宿泊するホテルは湖の上にあり、ボートでしか行けないのだ。連絡を入れてぼんやり待っているとほどなくして迎えのスタッフが現れ、私たちは船着き場へと移動した。

係留しているロングテイルボートのひとつに乗り込む。他の乗客はタイ人カップルが一組だけである。船が出発して彼らは熱心に写真を撮っていたけれど(タイ人はとても写真好きだ)やがて飽きてしまったらしくスマホを覗き込んでいた。

何せこの湖、海みたいに広いのだ。
チャオラン湖(別名ラチャプラパーダム)は巨大な人工湖である。村も森も何もかもを神様みたいに水の底に沈めてしまって、湖面からは水没を免れた岩山だけが突き出ている、そんな景色の中を船は進む。まるでノアの箱舟みたいに。

湖上のホテル|Panvaree The Greenery

30分も湖の上を走って、ようやく今日泊まる水上ホテル《Panvaree The Greenery》に到着した。切り立つ岩山の断崖絶壁の下に水上コテージが数珠繋ぎになって浮いている、なかなか珍しい立地の絶景ホテルである。

まず何といってもホテルから見上げる岩山の景色が素晴らしい。ライムストーンのアイボリーに植物の緑がよく映えている。ほぼ垂直の断崖は今にもこちらに倒れてきそうな迫力だ。高層ビルを下から見上げてゾクゾクするのが好きな私には堪らない光景である。この感覚、誰かわかる人はいるだろうか?

水上コテージは船内の上等な客室みたいに綺麗だった。部屋は艶々の板張りで大きなベッドが設えてある。シャワーはちゃんとお湯が出るし、水上とは思えないくらい快適である。近くを船が通ると波が立って部屋全体がユラユラ揺れた。一泊3,400THBで三食+朝晩二回のボートツアー付き(プロモーション価格だった)。

コテージは二階建てで、一階の部屋の方が少しだけ値段が高い。部屋から直接湖に飛び込むのが面白いので、ここは一階に泊まることをおすすめしたい。

ホテルのレストラン

レンタルフリーのカヤックを借りて、さっそく目の前の湖に漕ぎ出す。海と違って波がないのでカヤックは滑るようにスイスイ進む。

二本の枯れ木が寂やかな湖水の面に墓標のように立っている。鳥の声も虫の音もなく、湖上はがらんと静かである。それは何とも言えない不思議な感覚だった。とても広くて、とても静かだ。もしかしたら宇宙の静寂に似ているかもしれない。宇宙にはまだ行ったことがないけど。

チャオラン湖ボートツアー

夕方、チャオラン湖の絶景ポイントを巡るボートツアーに出発した。所要時間は1時間ほどで、次第に青らんでいく空気の中をボートはぐんぐん進んで行く。遠くに連なる岩山が幾層もの青い縞を作っていた。

人気のフォトスポット
三つの岩山が並ぶ有名なフォトスポット

ボートが進むにつれて岩山が左右に展開し、目の前に岩壁は迫ってくる光景は本当に圧巻、圧倒される。チャオラン湖のこの独特の地形は、約7千年前に大陸プレート同士がぶつかった際に地面が隆起して出来たものだという。

そんな巨大な時間を含んだ奇岩がじっと湖面に立っている。その風景はどことなくマグリットの絵に通じる不思議さがあった。いつか水の浸食が進んだら水上に浮遊しそうである。

ピレネーの城|マグリット

タイ南部料理を食べる

夜、ホテルのレストランでタイ南部料理を食べた。「シーバスのから揚げ」「豚肉のレモングラススープ」など、どれも家庭的な味わいでおいしかった。
代表的なタイ南部料理のひとつに《パックワーンパッドカイ》という葉野菜と卵を炒めた料理があるのだけど、これはまろやかに甘くておいしい。口の中でプツプツ切れる葉脈の歯ごたえも良い。この料理はどこで食べても大抵おいしくてはずれが無い。

チャオラン湖のマジックアワー

日の出と日の入り前の僅かな時間、空がグラデーションに美しく染まる現象を写真用語で《マジックアワー》と呼ぶ。
早朝のボートツアーではチャオラン湖のマジックアワーを堪能できる。これはチャオラン湖に一泊した者だけが体験できる特権だ。

微光を含んだ雲に覆われた空に、山々が青い夢の影のように佇んでいる。明暗がせめぎ合う一瞬のあと、朝日が山の稜線を砕いて現れる。私たちを乗せたボートはしろびかりの平原をどこまでも進んでいく。まさしく魔法みたいな時間だった。

あの迫り来る岩壁の迫力や、湖上の空気感はなかなか映像では伝えることができない類のもので、チャオラン湖はそういう魅力を多分に含んだ場所だった。ぜひご自身で体感してほしい。
そしてできれば、カヤックに乗って、湖上の昼寝を楽しんでみてほしいものである。

動画で見るチャオラン湖

サポート頂いた方へのお礼

記事をお読み頂き、誠にありがとうございました。本文は以上で全てです。ここから先は有料になりますが、私たちの旅を気に入って頂き、"まいばるにジュースの一本でも奢ってやるか〜”、と記事を購入頂いた方へのせめてものお礼として、使いきれなかった写真が置いてあります。
チャオラン湖の風景がもっと見たい方や泊まったホテルに興味がありましたら、ご覧いただければ幸いです。

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