見出し画像

私の読書遍歴② 探索期

小学校高学年から、夏の100冊を制覇することに夢中になりはじめた。
夏の100冊とは、毎年夏になると、新潮、角川、集英社の3社の文庫が約100冊ずつピックアップされて紹介されるフェアのことで、フィクションを愛する読書家にとっては避けては通れない道と言っていいだろう。

毎年、夏休みに入る前に書店で配布されている夏の100冊の小冊子を集めて、この夏に読むべき本を吟味した。そして、小冊子に読み終わった本のしるしをつけていくのが夏休みの習わしだった。

この時期に読んだものとして、以下のタイトルを記憶している。

「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ
「クリスマス・キャロル」チャールズ・ディケンズ
「こころ」夏目漱石
「地獄変」芥川龍之介
「きらきらひかる」江國香織
「ピアニシモ」辻仁成

江國香織さんと辻仁成さんが特に好きになり、当時刊行されていたお二人の本はすべて読んだ。のちにお二人の共著(「冷静と情熱のあいだ」や「左岸/右岸」)が刊行された時には歓喜した。

宮部みゆきさんの「龍は眠る」もたしか、夏の100冊に選出されていたのだと思う。
当時の部活の顧問(彼もまた読書家だった)にその感想を話すと、君が好きそうな本があると薦めてくれたのが、綾辻行人さんの「十角館の殺人」

私の読書人生に推理小説というものが飛来した瞬間だった。

金田一少年の事件簿も名探偵コナンも未履修だったそれまでの私にとって、ミステリと言えば痴情のもつれと金銭トラブルがメインの二時間サスペンスか、横溝正史の八つ墓村をはじめとする耽美なかほり漂う怪奇映画の二択だった。

ところがどうだろう。
「十角館の殺人」の持つ、トリックのうつくしさ。伏線に次ぐ伏線、回収に次ぐ回収。
「こんな(ジャンルの)小説があるのか!」と、雷に打たれたような驚き。

この出会いが、その後の十年間の読書傾向を大きく変えたと言っても過言ではないと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?