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会うことのなかった祖母から受け継いだもの

一昨年の秋に一時帰国した時、久しぶりに寝泊まりした実家の私の部屋。
私がパリに旅立った2005年2月のままのカレンダー、懐かしい勉強机、パステルカラーのカーテン。
あの頃とほぼ変わりなく保存された部屋に入ると、子供時代〜高校生までの様々な記憶がブワリと一気に押し寄せる。

スーツケースを開け、持ってきたワンピースをしまおうとクローゼットを開けると、そこには既にずらりと掛けられた複数の花柄のワンピース。
うちは母も妹も花柄のワンピースを着るタイプではないので、誰のものだろう?と思い母に聞くと、祖母のものだったという。

祖母。
若くして亡くなり、私は写真でしか見たことのない祖母。
父や母よりも、私はこの祖母に顔がそっくりで、歳を重ねるごとにどんどん似てくるのが、祖父の家に飾ってある写真を見るたび不思議だった。
その祖母のものだったワンピース。

私は子供の頃、花柄ワンピースを着て、ポニーテールにリボンを大きく蝶々結びするのが定番のスタイルで、当時の写真を見ると、だいたいいつもそんな格好で写っている。

パリに来てからはヴィンテージの花柄ワンピースを集めるようになり、私の人生で花柄ワンピースを着ている日数はトータルするとかなり多いように思う。

何枚持っていても新しい花柄を見ると胸がときめくのは、単純にそれが私の好みだからだと今まで思ってきたけど、クローゼットに並んだ色とりどりの祖母のワンピースを見たら、もしかしたら生まれる前からDNAに刻まれていたのかもしれないという気がする。

パリに戻る日、数枚選んで持ち帰ってきた祖母の花柄ワンピース。
顔も見たことのない孫が、パリで自分のワンピースを着ることになるなんて、祖母は考えもしなかっただろうなと思うけど、着ていると不思議と私にパワーをくれる気がする。
静かに私の日々を見守ってくれている祖母の花柄ワンピースたち。
飛び上がりたいくらいに嬉しい日も、心が粉々に割れてしまいそうな日も。

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