見出し画像

突然雨に降られた時は

マレ地区の展覧会を見て外に出ると、突然の降りしきる雨。
しばらく軒下で庭園を眺めながら雨宿り。
湿度の高い空気、冷え込む気温。
身体が冷たくなってきても雨は止みそうにないので、小走りで駆け込んだ一番近くのカフェ。

カウンターに座り、国立中央文書館で見てきたばかりの展覧会を頭の中でもう一度再生する。
カフェラテで温まってくる身体。
展覧会は、私がとても尊敬している女性政治家シモーヌ・ヴェイユについて。

シモーヌ・ヴェイユは第二次世界大戦中にアウシュヴィッツへ送られ、収容所で両親、兄を失い、過酷な環境を生き抜き生還。
フランスに帰国後、結婚。
3人の子供を育てながらも仕事を続け、厚生大臣として入閣。
そこで彼女が取り組んだのは人工妊娠中絶の合法化。
反対派の猛烈な攻撃を受けながらも、女性の為に戦い抜いたシモーヌ・ヴェイユ。
彼女の持つ熱い信念、誇り高い生き方、知性を感じる類稀なる美貌。

私はフランスに来てからシモーヌ・ヴェイユについて知り、感銘を受けた政治家であり、尊敬する女性の一人。
数年前に公開された、彼女の人生を描いた映画「Simone, le voyage du siècle」も素晴らしく、見る人に大きな力を与えてくれる作品で、
一人でも多くの人、特に女性に見て欲しいと思う映画です。
(日本語タイトルは「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」。)

シモーヌ・ヴェイユに想いを馳せながらぼんやりしていると、耳に入ってくるカフェの店員の会話。
「なんか今聞きたい曲が思い浮かばないなぁ。
南国な音楽かけてみたけど、この天気だと全然気分じゃない」
耳を澄ますと、確かに店内に流れている陽気な音色。

「ねぇ、マドモワゼル、何の曲を流したら良いと思います?」
と、急に話を振られたので、「うーん、フランスのシャンソンかな。1960年代くらいの。例えばブラッサンスとか。」と答えると同時に店内に響き出すブラッサンスの声。
そこにちょうど入ってきた常連のムッシュー。
「あれ?ここでブラッサンスかかってるなんて珍しいね」
「こちらのマドモワゼルからのリクエストですよ」

そんな感じでそのまま数曲みんなで歌って盛り上がり、気付くとあんなに降っていた雨は止み、外には広がる青空。
偶然入って雨宿りをさせてもらったカフェでの、束の間の楽しい時間でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?