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”The お手伝い旅 チョンボとクロラーン”

いつも「村にお任せって、どんな旅になるの?」と聞かれるので、その時々の旅で生まれた物語を少しづつ、ここで書いてみようと思います。

2019年12月3日。かつてNapura-worksでインターンをしてくれていた女子の紹介で、日本からいらっしゃった女子一人と1泊2日の村旅をすることに。

「とにかく、すごくいいから、行ってみてください!!!絶対合うと思うんです。」と元インターン女子のレコメンドにより、プノンペンから都市間バスできてくれたコハルさん。
バス停までお迎えに行くと「よかった!無事につくか、ドキドキでした」。確かに、初めてのカンボジアで、自らチケットを買って、都市間バスでのコンポントムはなかなかに冒険ですよね。
今回はカンボジア滞在3泊のうち、1泊を友人がものすごく勧めたサンボーでの村旅&ホームステイに選んでくれました。

TukTukでサンボーに向かう道中に、いつもながらいろいろお話ししていると食に関わる仕事をされていることが発覚。それならば!と、さっそく道すがら地元の中学校の前のおばあちゃんの(何が入っているのかわかんないけど美味しい)揚げ饅頭、竹筒で蒸しあげたおこわ(クロラーン)を買ったり、カシューナッツ工房に寄り道したり、など地元のもぐもぐを訪ね歩く。

村について、ホームステイで最初のご飯をいただいたら、今日はちょっと遠くの市場がある村へ行きましょうか、と相談。村の台所を見学に。

TukTukで出かけたら、遺跡の入場券売り場の前の木陰でおばちゃんたちが何やらカンカンやっている。なんだろ?とちょっと覗いてみると、ああ、これか!「チョンボ」という森の木の実を割っていました。

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中にはアーモンドのような白い実が入っていて、これを塩で炒って食べると美味しいんです。
これまで最終の炒りチョンボと、厚い外皮を剥く前のコロンとした外観と、森でキッズたちが遊びながら割っている姿は遠くから見たことがあったけれど、実際にこんなに大量のチョンボさんを剥いている場面は初めて。

このチャンスを逃す手はない!おばちゃんの一人が持ち場を離れた隙に「手伝おうか?」と斧を構えてみる。
絶対手を叩いちゃうよー!と言われつつ、挑戦。こんな感じで。

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これ、始めるとハマるんです。硬くてなかなか割れにくいのに、ある一点を叩くとパコッと割れたりして。割れた瞬間に手にビリビリっと振動がきたりして。そして、せっかく割ったのに中が虫食いだったりすると、悔しかったりして。なかなか割れないチョンボさんとのあれこれ、コハルさんが動画を撮ってくれてました。

小一時間、おばちゃんたちの作業と井戸端モーメントの中に浸って、
「チョンボのこと、英語ではなんていうの?」
「え、わかんないな、あるのかな?」
「日本語ではなんていうのよ?」
「いや、これ日本にないと思うよ!たぶん」
「え、そうなの?」
など、チョンボを通じて村や日本のことをとりとめもなく話すひととき。

このまま日暮れまで一緒に作業してもいいくらいのめり込んだものの、そろそろ次の場所へ。市場の村の市場をぶらぶらして、知り合いのおばちゃんたちが住んでいるゾーンへ歩いている間、いつもの脱穀屋さんの庭から煙が。なんだろ?とヒョイっと生垣越しに覗いてみると・・
なんと!クロラーンをまさに今、焼いているところ!
聞いてください、このジュワジュワを。(と思ったら、脱穀の注文が・・脱穀機の音が・・!)

今朝、道中で買って食したあのクロラーン、村ではなかなか作ってる現場に出会わないのに!コハルさん、持ってますね。
この竹の筒の中にお米と黒豆とココナッツとお塩とお砂糖を入れて直火で蒸しあげるクロラーン。おばちゃんに聞いたら、今日は街から親族が遊びに来るから食べさせてあげようと朝から作っているそう。
「やっぱり自分ちで作ったほうが美味しいわよ」
なるほど。食と暮らしの距離が近い人たちならではの一言。

竹の筒の先端から飛び出しているのはココナッツの殻の中身。その傍から、じゅうじゅうと音を立てて、美味しそうなお米のブクブクと湯気が。
「ねね、おばちゃん、あとどれくらいでできるの?」
「うーん、1時間くらいね」
とのことだったので「戻ってくるね!」の一言を残して、目的のお宅へ。

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最近忙しくて顔を出してなかったナンさんのところへ。案の定「しばらく顔見せなかったじゃない〜!どこにいたの?!」と。
お家に上がらせてもらったら、話しながら何かをチョキチョキしている。手作りのお魚パウダー(お魚を炒って粉にしたもの。子どもたちと家族の健康促進のために啓蒙団体が作り方などを普及しているやつ。)のラベルを切って貼ってしている。

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高床式木造のお家は日中の暑さを避けるように、家の中はやや暗い。
だから正面の扉(日本で言うところの玄関か?)から入ってくるあかりでチョキチョキ、ペタ。せっかくならば、ペタのところをやりますよ、と。
私「全部終わるまで手伝うよ。」
ナンさん「あ、そう?でも、あと3つだね。これで終わり」
コハルさん「待って、これついてない。もう一個あるよ、お母さん」

3人の間にはしゃき、というハサミの音と、ゆっくりな時間があり、時々そのうえを日本語とクメール語の会話と階下からの涼しい風が流れていく。
「なんだか、今日はみんなのお手伝いをする旅ですね」と話していたら、
ナンさんから「おっけい!これが最後!」と完了の合図。

お手伝い旅の締めくくりは、戻ってきました、約束のクロラーンのお宅へ。

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夕方の光を背負ったおばちゃんが、
「あんまりこないから帰っちゃったかと思ったよ!ちょうど焼けたところだから、食べて行きなさい」と焼きたてのクロラーンの、外側の青竹を丁寧に削いで、ほいっと手渡してくれました。
竹の薄皮に包まれたほわほわのもち米。ココナッツの香り。ほんのり塩味。

朝のやつより、格段に美味しい。
うん、本当に、コハルさん、持ってますね。

みんなの暮らしの瞬間に、ちょっとだけお邪魔させてもらう1日。
事前につくり込んだものじゃないからこそ、村で起こる”おもしろそうなことサイン”にアンテナを立てて、ちょっとだけ勇気を出して踏み込んでみる。

村は暮らしの現場だから、そこで起こることは日々、折々にちがう。
そしてお客さん一人一人が持っているアンテナはちがうから、
その日に巡りあう暮らしもちがう。

村にお任せ旅は、それぞれ違う物語が村とお客さんの間に生まれるのです。

サポートいただいたら、私たち家族とその仲間たちのカンボジアライフがちょっとほっこりします☆