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かたちよい爪になりたい

わたしの爪はとても小さい。指が細くて爪が小さいなら華奢な感じでいいのだが、指はごく普通の幅と長さで、もうちょっと爪の面積があってもいいだろうに……とちょっぴり憐れんでやってもいいくらいに爪が小さい。
で、小さいうえに丸い。爪を切るときにできるだけ長く見せようと頑張ってみても、なんというか持前の「丸さ」がもこもこと前面に出てきて、気づけばいつもの丸い爪になっちゃっている。前世できっとつまらぬ罪、たとえばポテチふたりでわけようってなったときに、最後3枚残ったのをあたかも残り2枚かのように相手に1枚渡して終わりにしちゃったみたいな、そんなんを犯してしまったばっかりに、爪がこんなにも小さくて丸いのだろうか。むん。

母の爪はもっとちゃんと細長くて、指に合った爪がきれいにこんにちはしている。いわゆるネイル映えする長さが担保されているのだ。そのくせ、ネイルは爪が息できなくなりそうだから苦手、とのこと。爪って息してたのか。あなたから産まれなければ知りませんでした。娘の爪のことを、そっちのほうが丸くてかわいくていいじゃない~と適当にハートマーク付きの調子で返してくれるのだけど、ネイルサロンに行くたびに「爪が(苦笑)小さいほうですね(苦笑)」と、ある意味そこまできたらもはや10本の文鎮だろというほどじゃかじゃかした付け爪のネイリストさんに言われたり、サンプル上はキラキラパーツが2つ付くはずなのに基盤がアレゆえに1つしか乗らなかったときのお互いの「アッ」→若干笑うまでの短い沈黙を乗り越えてきたりしてないのだ。世の素敵爪ガールズ、うらやましい。

爪を伸ばすコツはいくつかあるらしくて、そもそも素人が爪切りでしょっちゅうパチパチ切るのはよくないらしい。定期的にネイルをすると、その都度プロが手入れをしてくれるので、だんだんにょきってくれるそう。あと甘皮もとってくれるので、そのぶん爪の根本側があらわれて長く見える。ちょっとずるい。が、わたしみたいなのはもうそれにすがるしかない。
生まれ持った爪の性質というのがあるから贅沢はいえないが、『囁き記』の表紙のアイスクリームに添えた親指を見るたびに思ってしまう、爪のみじかいおはなしでした。


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