内容量表示について(景品表示法)その1
1. 内容量にまつわる問題点
液体や気体の商品には通常、内容量が記載されている。重量表示の場合もあり、固体の製品では重量での記載が多いように思われる(私見)。
どんな製品でも、製造工程の能力の限界から、必ず誤差は発生する。
誤差はどの程度の範囲であれば、景品表示法により罰則の対象になる「有利誤認」とみなされず、法令抵触を防げるのであろうか?
それはパーセンテージか、もしくは絶対量か、モノによって違うのだろうけれども。
ふと気になったので調べてみることにした。これはその備忘である。
2.法令を見てみる
知っている人には釈迦に説法だが、景品表示法で規制される「不当な表示」には、主に2つの類型がある。
「優良誤認」(内容の不当表示)と「有利誤認」(取引条件の不当表示)の2つ※1があり、内容量の問題は主に後者の「有利誤認」として規制されるようである※2。
※1:本当はもうひとつ、特別に指定されている不当表示類型があるのだが、これは省略。
※2:消費者庁パンフレット「事例でわかる景品表示法」p10にも、商品の内容量は有利誤認のカテゴリで解説されている。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_160801_0002.pdf
大阪府ウェブサイトのH26指導事例No.13にも「実際の商品は、カタログに掲載された商品に比べ内容量が少なく、太さもカタログに表示されていたものとは異なっていました」という指導事例が紹介されている。
http://www.pref.osaka.lg.jp/shouhi/shidoujirei/sidoujirei.html
ただし、法令レベルでの規制は単に「商品又は役務の価格その他の取引条件について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく有利であると示す表示」としているのみで、どの程度であれば「著しく有利」であるかは明示されていない。
健康食品ガイドラインなどでは「『著しく』とは、当該誇張の程度が、社会一般に許容される程度を超えて、一般消費者による商品・役務の選択に影響を与える場合をいう」と記述されており、逆に言えば程度によっては表示からの差異があったとしても、法令違反とされないケースもあると理解できる。
他方、この状態では違法とされない具体的な閾値がわからず、消費者の権利行使の側面からも、事業者の自己防衛の観点でも予見可能性が低い状況と言える。
争訟コストの増大、またはコスト倒れを想定した消費者の泣き寝入りのリスクが懸念される。
景品表示法自体、ある程度どんな不当表示にも関与できるようなあいまい規制の感があるので致し方ない面はあろうかと思うが、参考にできるものがないかどうかもう少し調べてみたい。
3. 公正競争規約
公正競争規約は景品表示法の規定に基づいて、業界が自主的に定めている景品と表示についてのルールである。公正競争規約に参加し、これを遵守している限り景品表示法に違反することはない、とされている。つまり、公正競争規約とは規制当局との合意に基づくセーフハーバー・ルールといえる。
いくつか具体的に見てみる。
乳製品規約
→計量法の規定に従い表示する
果実飲料
→g, kg, ml. lのいずれかの単位で、単位を明記して表示
(→飲料は計量法の特定商品とされている。次回検討)
ビール
→ml. lのいずれかの単位で表示する
(→飲料は計量法の特定商品とされている。次回検討)
化粧品
→g. ml, 個数等で表示する。
→重量または体積は平均量か最小量で表示する。
→平均量で表示する場合の不足側公差は-3%以内とする。
ペットフード
→g, kg, ml. lのいずれかの単位で、単位を明記して表示
→間食は「個」などで記載可能(なんでだろう?)
→内容量の許容誤差限度の表示は、全国計量行政会議のガイドラインに準ずる。(これは計量法の政令と同じ???)
家庭用洗剤
→家庭用品品質表示法の規定による
→計量法の規定に準ずる
以上、内容量がある程度購買判断に影響するであろう商品をいくつか見たが、規約そのものに誤差許容範囲を明記している例は多くなかった。
明記していない例では計量法を参照させる例がよくみられる。
次回は計量法や、思い当たるほかの法令を見ていくことにする。