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ストックオプションとは


信託型ストックオプション、新興13社が税返還訴訟検討

信託型と呼ばれるストックオプションの税務処理を巡り、上場新興企業13社が源泉所得税の返還を求める訴訟を検討していることが分かった。

国税庁は5月、信託型の権利行使で得た利益に対して給与として課税する見解を示した。導入企業に追加の税負担などが生じるため不満が広がっている。

信託型は民間の弁護士やコンサル会社が2014年に開発した。未上場・上場を合わせて約800社の新興企業が導入している。導入企業は役員や従業員が権利行使で株式を獲得した後、それを各自が売却した際に利益の20%を納税する想定だった。

だが、国税庁が示した給与課税では権利行使の段階で、株式の購入額と時価の差額に対して最大55%の税金がかかる。会社側に源泉徴収義務も生じる。国税庁は権利行使が済んだ分について過去5年間に遡って納税を求めた。


ストックオプションとは

あらかじめ決められた価格で自社株式を購入できる新株予約権の一種で、企業が役員や従業員などに付与する。ある企業が自社の株式を1株100円で買える権利を付与し、3年後に上場して株価が1000円になったとする。権利を行使して株式を100円で取得し、売却すれば900円の利益を得られる。企業の成長を収入に直結させることで働く意欲を高める狙いがある。

今回問題になっているのが「信託型」と呼ばれる仕組みだ。成長初期の段階で発行したストックオプションを信託に移すことにより、低い行使価格の権利を「冷凍保存」するイメージだ。入社時期が遅い社員にも同じ条件の権利を付与できる利点などがある。優秀な人材を獲得するため、スタートアップを中心に約800社が導入しているとされる。

信託型ストックオプションとは

「ストックオプション」に、信託制度を組み合わせたもの。2016年3月、日本で初めての信託型ストックオプションがKLab株式会社で導入された。

会社の経営者等が信託銀行等に資金を拠出し信託を組成、信託銀行等はその資金で会社からストックオプションを購入し保管する。

信託期間中、受益者は業績や評価に基づいてポイントが付与され、信託期間満了時には獲得数に応じてストックオプションを受け取ることができる。

これにより、信託時点でのストックオプション条件を留保することができるため、後から入社した従業員等にも株価変動にかかわらず、同条件のストックオプションを付与することができる。

導入から7年、なぜこのタイミングで課税なのか


信託型ストックオプション導入から7年、なぜこのタイミング今回の見解を示したのか。

課税イベントは、導入された段階ではなく、上場して、権利行使して、売却をしてはじめて発生する。そのため、実例がこの1、2年で出始めたところで、「確定申告の時に国税庁は『聞かれたら給与所得だと答えた』ということで、一度も(譲渡所得とは)認めていない。

しかし、信託型を開発した民間は『税務当局の意見を伺いながら作成したスキームだ』ということで、言った・言わないの議論になり、これから訴訟に発展するのではと言われていた。

スタートアップ育成を掲げる岸田政権と逆行

多くのスタートアップが将来の株式上場を見越し、優秀な人材獲得手段の1つとして活用。岸田文雄政権も「スタートアップ育成5か年計画」で「税制適格SO」と呼ばれる従来型SOの使い勝手を高める姿勢を打ち出していただけに、今回の国税庁の見解表明に対して不安と動揺が広がっている。

一方、同じ問題を異なる観点から評価する見方もあります。米国でのスタートアップ起業経験を持つホール・アース・ファウンデーション(WEF、シンガポール)創業者兼CEO(最高経営責任者)の加藤崇氏は、次のように指摘する。

 「日本の信託型SOは、給与所得となるべき所得の税額をキャピタルゲイン(売却益)課税相当まで下げようとする、ある種の節税(脱税)行為。ベンチャーに向いていない人でも、創業者や役員などが信託型SOで(普通)株式を手にすれば(課税額が20%と低い故に)大金持ちになれるが、創業後に参画した人は優秀でも報われにくい面があった。

国税庁がこうした課税の公平性につながる方針を打ち出したのは(参画時期の違いによる“損得”をなくすという点などで)スタートアップ育成につながる正しい判断だ」

国税庁の見解はスタートアップの育成方針と逆行しかねず、政府・自民党は今後、影響を小さく抑えるための調整に入る見通しだ。


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