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【UoP番外】そうだ、僕はこういうの苦手だったんだ

今日もお読みいただきありがとうございます。
フォルケ学園長の眞山です。

University of the Peopleというオンライン大学院への留学を決めて、オリエンテーションを待っている間に、YammerというSNSへの招待がありました。

いくつかグループに入ってみると、「みんな、ユニット2の日記のトピックがわからないんだけど・・・」とか、「あれ、昨日締め切りの申込しといたんだけどポータルで反映されてない・・・」とか、結構活発なやりとりがなされています。

おそらくこのSNSでは学生同士の色々な情報が共有されていくし、ここを上手く使った人が上手に単位をそろえていくんだろうな。

と、そこまで考えて急に思い出したことがある。

ああそうだ、僕はこういうの苦手だったんだ。

はい、ここから長めの回想に入ります。

ルールに則っていけば道は開けると思っていた18の春。

高3の12月、センター試験を間近に控えていたころに、父が勤めていた会社が突如倒産し、新聞奨学生として大学に通うことを選んだ僕は、このまま頑張って勉強すれば道は開けると思っていた。大学から配布された履修要項みたいなものを見て、履修希望を出した。

いくつかの必修科目は夕刊の配達タイミングと重複しており、配達所に頼み込んだが「1週おきに休ませるのが精一杯」と言われ、進級に必要な単位という意味でも大幅なハンディキャップを背負っていたのだが、本当の大変さはそこではなく「友達作り」だった。

お金も時間もないから、入学早々開かれるクラスのコンパに参加することは当然できず、その次の週の授業で、突然クラスの空気から「よそよそしさ」が無くなっていたことに気づいた。ああ…僕は乗り遅れたんだな。そう気づくのに時間はかからなかった。

あの頃抱いた孤独感はしばらく尾を引いてしまい、僕は大学そのものがだいぶ嫌いになって、結局2年時に留年してしまうことになる。一浪して入学してきた古くからの知人と学年が追いついた。彼が僕をネットワークの中にすんなり入れてくれなかったら、本当にずるずるとドロップアウトしていたかもしれない。

何より、自分がその経験を抱えたことによって内向的な性格の持ち主になってしまい、「サークル」やら「コミュニティ」というものに溶け込むことへの苦手意識が延々と消えずにいた。

「ルール」と「攻略法」は違う。

その頃の学びを一言で表すと、そんな感じだ。

ライアーゲームというマンガがある。その中で「椅子取りゲーム」のような章があるのだが、途中で主人公が「このゲームの本質は『国盗りゲーム』だ」と言い当てるシーンがあるのだが、まさにそれだ。

勝つためには馬鹿正直に椅子を探すのではなく、椅子を皆で囲い込むために仲間づくりをしなければいけない。授業を休まないようにすることは僕には不可能だったわけで、代返やコピーを請け負ってくれる仲間を作らなければならなかったということに、僕は全然気づいていなかった。

…そういうことは学校では教えてくれないし、ましてや大学で「はいみんな、眞山君と仲良くしてあげましょうね~」って言ってくれる人など、どこにもいない。

ルールを守るだけの人は、ルールを手玉に取れる上級者のカモになるだけだ。ルールブックに書かれていない攻略法を見つけなければいけない…そんなことにおぼろげながら気づき、僕は資格取得への道を選ぶことになる。

「大学生らしきこと」に成功した唯一の体験

そんな僕が、大学にいるうちに「ネットワークのチカラ」を味わおうと思って実践したことが一つだけあった。4年次に履修したとある授業が、結構難易度が高いという評判だったので、会計士を目指す専門学校でガッツリ学んだ後だった僕は、持ち込み用のノートを作り、履修している皆に配ろうと考えた。

mixiだか、あるいは学内の何らかのグループウェアを使ったのかは覚えていない。とりあえず「ノートのコピーをお譲りします。10ページなのでコピー代100円をお持ちの上、正門に集まってください」という趣旨のことを書いたことは覚えている。

確か、2~30人ほど並んでいた。最初は「二郎の行列か?」と思ったほどだ。元々友達をほとんど作らなかった自分にとって、正門に待っていた学生たちは赤の他人だったわけだが、その瞬間だけめっちゃ仲良しみたいな空気を作られて(ああ、みんなこうやって世渡りしてんのか)と妙に納得したことを覚えている。

余談だが、その2~30人の学生は全員男子だったのに、数日後の試験会場には僕のノートのコピーを持っている女子学生がそこそこいて、世の中にはいろいろな「攻略法」があるんだなぁ…ということを何となく肌で感じたのもこの時だった。

気づけば僕もこっち側にいる(と思う)

その後、僕は公認会計士になった。

会計のプロっぽい仕事を何件もこなし、プロでないと知りえないようなノウハウを人にお伝えするようなことを生業にするようになった。ついでにプレゼンも得意になって、こんな動画にあるような戦績を残したりもした。

商業出版もこれまでに何回かしたが、処女作を出したときには恩師の七光りを存分に使った。「出版企画書を編集者に渡して、それが企画会議を通過すれば本を書ける」というルールはGoogle先生のおかげでとっくに知っていたが、山ほど届く企画書のほとんどは、実は編集者の目にも届かない。

が、会計専門学校の恩師の書籍で執筆協力させてもらって、その時直接編集さんと会う機会に恵まれ、自分の企画を飲みながら話し、話しながら一緒に企画を練るというショートカットに成功した。期せずしてそんな「攻略法」を実践できたおかげで、僕は作家になりたいという子ども時代の夢をかなえることができた。

教育の場で伝えたいこと

とはいえ、僕のその成功体験は、万人にとって再現性のあるものでは全然ない。逆に、ブログを書いていたらそれが本になったりといったウルトラCを成し遂げる人もいるし、攻略法はその人その人によって異なることも多い。

今までの社会は、「学業成就→良い企業」みたいな攻略法がメジャーだったわけで、それ以外の裏ワザは知る人ぞ知るものだったわけだけど、むしろ今はその学業で「どんなオンリーワンの体験をしたの?」みたいなオリジナリティを出さなければならなくなっていて、攻略法はどんどん多様になってきている。

裏を返せば、学歴を積み上げるという攻略法以外のルートが、この社会にはたくさん眠っていて、今はそれをたたき起こす絶好機になっている、ということでもある。

僕が教育の場で子どもに授けたいもののひとつは、人それぞれ攻略法は違えど、それでもみんなが備えるべき最大公約数的なスキルだろう。それを仮に「生きる力」と呼んでみる。

「生きる力」は、以下の3つに集約されると僕は思っている。

①やりたいことを見失わない力
②走りながら考える力
③他人の力を借りる力

自分がこれから教育学を学びながらフォルケ学園という場でそれを実践することを通じて、孤独なキャンパスライフを経験する若者が一人でも減ってくれたら、あの暗い時期を支えてくれた人たちにとっても良い恩返しになるのではないかという気がしている。

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