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IPO実務検定(上級)受けてきた

この記事は主にこんな方向けです。

・監査法人でIPOを担当している若手会計士の方
・IPOを検討している企業のバックオフィスの方(CFOから若手まで)
・公認会計士の方で何かしらとがった分野を持ちたい方
・経理系の仕事をしている方で何かしらとがった分野を持ちたい方

当てはまらない方も多いと思いますがご容赦ください。

IPO実務検定を受ける前に考えるべきこと

こういった検定に興味を持っていて、受けたいと思うのは素晴らしいことだと思いますが、ひとまずゆっくり考えてください。

~受ける意味あるのか?系~
・この試験で得られる資格は民間資格です。名刺に肩書(認定IPOプロフェッショナル)を書くことはできますが、「へぇ、認定IPOプロフェッショナルなんですね!」と言ってもらえる確率は現時点では超低いです。
・同じ理由で、例えば転職に箔がつくといった具体的なメリットはあまりありません。
・それでいて受験料はけっこう高いです。しかも肩書を使うには毎年有料サブスクくらいのお金をとられます(会費等は今後変動がありそうだからここには書きません。主催者HPをご覧ください)。

~受ける時期はどうなの?系~
・この記事を書いている2021年3月時点では、IPOの証券市場は東証1部・2部・マザーズ・JASDAQなどに分かれていますが、来年から再編が行われます。つまり今すぐ受験した場合、その知識はすぐ陳腐化します(IPOは社長が「やるぞ」と思ってから、短くとも3年ちょいかけてやるものだということも知っておいてください)。
・国家資格ではないので「受ける人が少ない今がチャンス」みたいなこともありません。そういう意味でも今受けることのメリットは少ないです。

…というわけで、ここまで読んで「それでも受けるんだもん!」という方は続きをお読みください。

IPO実務検定に関するノウハウがあまり多くない理由

IPO実務検定を受けようとする方にとって一番やっかいなのがこのポイントだろうと思います。受験ノウハウがほとんど明かされていません。理由は大きく4つあると思います。

理由①
そもそも受ける人が少ないんだろうと思います。IPO件数は、最近では100件弱/年で推移しています。この資格の学習範囲を活用していける人は年間1,000人にも満たないでしょう。その1,000人には公認会計士などの専門家、経験豊富な証券会社の社員なども含まれていて、そう言った人たちは「受けなくてもやっていける」ので、結局受験する人は年間数百人くらいなんだと思います。

理由②
教材が限られています。民間資格ゆえ、資格名を明確に謳った対策図書はほとんどなく、しかも大量に刷られているわけではない(これは理由①に深く関連しているはずです)ため、Amazonマーケットプレイスで妙にプレミアムが付いた値段で売られています。余談ですが、この記事を書いている時点(試験を受けた翌日)で、実は公式問題集は自宅に届いてすらいません。
テキストと同様、公式な対策講座を展開しているのもTACのみ。

理由③
試験問題の流出に厳しいです。試験はいわゆるCBT方式で行われるのですが、試験場にはほぼ手ぶらで行かなければなりません。メモや問題の持ち帰りもできず、問題をばらすんじゃね~ぞ的な注意事項を読まされて同意書も書かされます。結果として「どんな試験か」をわざわざ書く奇特な人が少ないわけです。

理由④
試験の難易度はそれほどでもないことになっていますが、私のような公認会計士が受ける場合と、その手の体系的な勉強をしたことがない人が受ける場合とでは、スタート地点で大きな差があります。結果として「自分のノウハウが他人に当てはまる可能性が低い」ことになり、ノウハウをわざわざ書く奇特な人が少なくなってくるわけです。

なので、IPO実務検定を受けようと思っている方は、
・「IPO実務検定?何それ美味しいの?」という声に耐えつつ、
・ほとんど出回っていない限られた教材を使って、
・どんな試験が出されるかもわからないままに
・マイペースで地道な勉強をする
必要があります。

僕の経歴と受験動機

僕はもともとトーマツという大手監査法人にいました。
その中でIPOを得意業務とするトータルサービス部門(今は監査部門に吸収されました)に在籍していて、IPOという概念には少なからず基礎知識・言葉に対する「慣れ」があります。公式教材の中には、トーマツのメンバーが書いたものが1冊あるのですが、その著者たちは全員名前を見たら顔が思い浮かぶし、中には一緒に仕事をした人もいます。

また、トータルサービス部に移籍する前には、内部統制の構築業務などにも携わっていて、IPO実務検定に出題されるガバナンスや内部統制の概念にはもともと精通しています。

現時点では公認会計士としての仕事はがっつりとはやっていませんが、会計に関するセミナーを頻繁にやっているため、知識は陳腐化しないようにしています。

僕が(すでに挙げたようなビミョ~な面を全て受け止めたうえで)今回の受験を決意した理由の大半が、まさにこの「知識を陳腐化させないようにアップデートする」という部分です。

公認会計士はそもそもCPE(継続的専門教育)という制度があり、一定量以上の学習が義務付けられています。その一環として勉強をしているうちに、テストそのものを受けてみたいという欲に駆られて受験した…というのが正直なところです。

どんな勉強をしたか

試験の準備に割いた時間は
・試験7日前に2時間(「要点整理」を通し読み)
・試験前日に2時間(「ケーススタディ」を通し読み)
・試験当日の朝に2時間(上記2冊を通し読み)
の合計6時間です。

「要点整理」や「ケーススタディ」はIPO実務検定のサイトを見れば何の本のことかはすぐに分かると思います(※近々改訂が入るようなので書名にAmazonリンクは張っていません)。

本当はほかにも「公式問題集」や「公式テキスト」があり、それも注文をしていたのですが、なんとまあAmazon出品者が試験前に届けてくれず、キャンセルしてしまおうか思案しているところです。

どんな試験だったか

CBT形式なので、会場にあるパソコンをつかって試験を受けます。上級試験の場合は2段階に分かれます。

第1段階:選択式
問題の形式としては「正しい選択肢を選ぶもの」「誤った選択肢を選ぶもの」「正しい選択肢の個数を数えるもの」「誤った選択肢の個数を数えるもの」「順序の並べかえ」の5種類が出題されます。問題数は全60問。合格ラインは70%ですが、この数値は記述式との単純平均です。
選択式の試験で何点とれたか?は、問題を解き終わって「試験終了」のボタンをクリックした瞬間に分かります。ここで足切りラインを下回る点数を取ってしまった場合は不合格確定となりますが、無事足切りラインを超えれば次の段階に進むことができます。

試験時間は60分ですが、僕は30分かからずに解き切れました。時間は十分あると思っていいでしょう。

第2段階:記述式
記述式ではPCのキーボードから文章を打ち込むことで回答を作成します。大問3つで構成されるので問題数は多くありません。よって、すべての単元からまんべんなく出るわけではなく、ランダムにいくつかの分野から出題される、と言った感じです。業務の流れを具体的にイメージしたり、単に暗記しただけではなくタテ・ヨコの整理ができていないと書きにくいであろう問題が多かったです。

試験時間は30分です。僕はこうやってしょっちゅう文章を書いているのであまり時間はかかりませんでしたが、一般的にはちょうど30分あると良い感じに書ききれるくらいの時間なんじゃないかと思います。

結果は?

選択式は合格ライン(70%)をそれなりの余裕をもって突破出来たため、記述式でよほどのこと※をしでかしていない限り合格だろうと思います。

※紙の試験ではないので、名前の書き忘れや解答欄誤りみたいなミスはまぁないでしょう。だから、手ごたえとしては「普通に受かったんだろうな」という感じです。

試験結果が届くまでには2週間~1カ月かかるということですが、コロナ禍ですし1カ月を超えて忘れた頃に便りが来るんじゃないでしょうかね。

僕の場合、すぐに知識を仕事に活かすわけでもなく、むしろ知識のメンテナンスが目的だったので、6時間というさほど長くない勉強時間ではあったものの、IPOの流れを大まかに整理することができて良かったと思っています。

続報:
無事合格してました。

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