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妊娠 no.1

 自由気ままにNYを楽しんでいた私は、ある日からどうも体の調子がおかしい事に気付いた。走れない。なんとなくだるいし、体温が上がっている気がする。直感で妊娠していると思った。その時のパートナーはずっと私との子供が欲しいと言っていたので、喜んでくれるだろうと思いその事を伝えた。返ってきた言葉は意外なもので、私の頭の中は真っ白になった。

「俺の子供じゃない。」

そうか、そうきたか。5年以上関係していて、これか。怒りより先に諦めがきた。私もそんなに子供好きじゃないし、某レコード会社との契約も決まりそうだし、ここら辺でさくっと一度日本に返って堕胎してこよう、そしてまたNYに戻ってやり直そうと思い立ち、すぐ日本に帰国した。

 とりあえず、東京の産婦人科でみてもらった。妊娠6週。小さな卵だった。エコーを見た時も実感は湧かなかった。すごく冷めていた。今思えば、何も感じないようにしていただけだったのかもしれない。とにかく、よくあるドラマのようにエコーを見て命に感動する、なんていうのは全くなかった。北海道の実家に帰りたかったので紹介状を書いてもらい、その日は帰宅とした。淡々と事を終わらせるつもりだったのに、帰り際の助産師の何気ない一言で私の人生は大きく変わる。

「次は笑って産めるといいね。」

その一言で、無意識に押し留めていた感情はじわじわと混沌のまま溢れ始めた。

新しい感情に混乱しながらあてもなく歩き続けた。行き止まりに気付き、空を見上げると大きなマリア様の壁画。

あぁ、この子は生きようとしている。

その一瞬で理解できた。私は覚悟しなければいけない。混沌の中に光が射した瞬間だった。

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