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ヤマトタケル物語【隣のシグナス】《6.ふたりの夜明け》

こんばんは! 守護神鑑定&占い◆白樺の騎士団・七庭(ななば)です。

今回は「ヤマトタケル物語【隣のシグナス】」の続きをお送りします!

前回のお話は下記をご覧ください。(第6話の冒頭にも簡単なあらすじをのせています)


↓第1話からお読みになりたい方はマガジンからどうぞ!


イラストは今回も川上ケイコさんにお願いしました!

素敵なイラストをありがとうございます(*^^*)


※この作品は私の創作神話です。無断転載、二次利用はご遠慮ください。(©︎2021 白樺の騎士団 七庭育)


◆あの日のこと

【前回までのあらすじ】最愛の妻・オトタチバナヒメと再会したヤマトタケル。互いの過去について語り合っているうちに船の上で朝を迎える。

「なんだか夢みたいだな。またこうして朝まで一緒にいられるなんて」

「そうですね。こんな日が来るなんて思いもしませんでした」

船の中は朝の光で溢れている。

朝日に照らされた妻の顔を見ていると、自然と笑みがこぼれた。

私の顔を見て、妻も優しく微笑む。

「あなたはよく笑うようになりましたね。前に一緒にいたときより、明るくなられたような気がします」

「そうかな?」

「はい。別れ際に見たあなたの悲しい表情がずっと心に焼き付いていたので、今こうして笑顔を見れて嬉しいです」

「あのときは本当にすまなかった。守ってやれなくて」

「いいえ。国のために懸命に戦ってきた夫のために身を捧げるのは妻としては当たり前のことです」


その言葉を聞いて、私は胸が痛くなった。

"妻は夫のために尽くすもの"

・・・本当にそうなのだろうか?

妻は私の妻である前にひとりの女性であるはずだ。

私の妻であるという理由で犠牲になる必要なんて絶対にない。

意を決して、私は口を開いた。


「それは違う。世間が何と言おうと、お前はお前の命を優先していいんだよ。誰かのために犠牲になっていい命なんてない」

妻は驚いた顔で私を見つめる。

私は迷わず話し続けた。

「たとえ人々がお前の犠牲を美化しようとしても、私はそれを認めない。私はお前を守りたかった。お前と一緒にいたかった。皇子である前に私はひとりの男なんだ。愛する人と共にありたいと思うのは男として当然だろう。国のためとか身分とか立場とかそんなもの関係ないんだ」

「・・・そこまで私のことを想ってくださっていたのですか」

「ああ。心から想ってるよ。だからこそあのような形で別れたくなかったんだ。もう国や立場に縛られるのはやめにしよう。これからはもっと自由に生きるんだ」


"自由"

それは私が皇子として生まれてからずっと望んでいたものだった。

自由を手にした今、望むことはただ一つ。

かつての自分のように何かに囚われている者たちを解放すること。


まずは今目の前にいる妻を自由にしたい。

私の最愛の妻を。


すると妻が、おもむろに口を開いた。




◆悲しみのその先へ

「私はあのとき、あなたの力になれて良かったと思います。さっきはあのようなことを言ってしまいましたが、あれは"皇子の妻としてとった行動"ではなく私自身がしたくてしたことなのです」

そして妻は私をまっすぐに見つめながらこう言った。

「昔も今もずっとあなたが好きで好きで仕方ないのです。あなたのためなら何でもしたいと思うほど好きなのです」

涙を浮かべながら私への想いを打ち明けた妻を見て、私の心は大きく揺さぶられた。

「あなたの言うことはよく分かります。でも私には後悔の念なんて少しもないのです」

妻がそう言い終えるやいなや、私は妻を強く抱きしめた。

「ありがとう・・・本当にありがとう」

私たちは長い間抱きしめ合い、お互いのぬくもりを確かめ合った。


「あの後、海の世界に戻ってからもずっと嵐の海が怖かったんです。あの日の悲しみを思い出してしまって」

長い沈黙の後で、妻が口を開いた。

「お前もそうだったのか・・・」

「もしかしてあなたもそうだったのですか?」

「ああ。海のない場所にいても荒れた天気の日は憂鬱だったな。でもこうしてまたお前に会えたから、もう気分が落ち込むこともなくなると思う」

そう言って、私は妻の髪をそっとなでた。

嵐の海を見る度に泣いていた妻の姿を思い浮かべるだけで胸が苦しい。

妻の心に降り積もっていた悲しみを癒すような気持ちで、私は妻に口付けをした。


「・・・あなたが抱いてきた憂鬱を私が全部吸いとってしまえたらいいのに」

妻が自分と同じようなことを考えていたと知り、私はより一層妻を愛おしく感じた。


「初めてかもしれないな。思っていることをこんなに正直に言い合ったのは」

「そうですね。あの頃の私たちは様々な思いをそれぞれの心に隠していましたから」

「もっとお前に素直に想いを伝えておけば良かった。そして・・・」

私は妻を抱き寄せ、耳元で言った。

「こんなふうにもっとお前に触れておけば良かったな」


妻は真っ赤になって、返答に困っている。

なんてかわいらしいのだろう。

私の胸は愛おしさでいっぱいだった。


「これからはもっと触れていくつもりだから、覚悟してもらわないとな」

「・・・はい。早く慣れるようにしますね」

はにかみつつも妻は笑顔で言った。




今回はここまでです!

本日もお読みいただき、ありがとうございました!

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