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#3 柳澤真理さん/Maru Cafe(佐久市)

古くから食文化が豊かな東信でも、「Maru Cafe」ほど食材を「商品」ではなく「人と自然のご縁の賜物」ととらえるお店はないでしょう。店主・柳澤真理さんが学生時代に発案し、2014年にオープン、いまや店のある通りや地域の界隈、さらには佐久市外・長野県外にまで「つながり」を広め、深めようとしているMaru Cafeの、現在と原点、そして今後について、真理さんにインタビューしました。

編集・取材・構成=岡澤浩太郎/八燿堂
写真提供(*)=Maru Cafe

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店を訪れたお客さんと会話する真理さん(写真右)(*)

■プロフィール:柳澤真理/Maru Cafe
長野県佐久市出身。東京の大学で環境問題や貧困問題を学んだことがきっかけとなり、学生時代に「Maru Cafe」のコンセプトを構想。Uターンし地元企業に勤めたあと、佐久の蕎麦店「職人館」や農場「アトリエノマド」で学び、2014年にパートナーの零さんとMaru Cafe、数年後に食材と日用品の店「Maru Cafe商店」、2023年2月に一棟貸しの宿「awai」をオープン。「地域でもっとも農に近いお店づくり」を掲げる。


※インタビューのダイジェスト+αはポッドキャストで公開しています


食べものをつくる人にあこがれる

岡澤浩太郎(以下、K) 初めてMaru Cafeに行ったのは、僕たち一家が長野に移住する前の2017年頃だったと思うんです。地域のことをまったく知らなかったので、たぶん「オーガニック」とか、そういう言葉で検索して、たどりついて。そのときはカレーを食べたんですが、いまはもう提供していないですよね。

柳澤真理さん(以下、真理さん) そうなんです。うちのお店は変遷がすごいんですよ。開店からずっとお付き合いしてくださるお客さんもいっぱいいるんですけど、見切り発車で始めたから失敗ばかりで……。

K いやあ、美味しさは変わらないですよ。Maru Cafeが開店したのは2014年でしたよね。その後、同じ通り沿いに食材や日用品を販売する「Maru Cafe商店」と、一棟貸しの宿「awai」がオープンしますが、「地域の自然とのつながりや人との縁を継続的に循環する」というような考え方は一貫していると思うんです。

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ある日のMaru Cafeのディナー。地元の食材が華やかに食卓を彩る(*)

K 特に農家さんなど、生産者の方たちへの思いを強く感じるんですが。

真理さん もう、リスペクトしかないですね。食べものをつくる人たちへのあこがれや、理解したいという思いはずっとあります。仕事やつくる野菜を見たら、これはもう、プロの仕事だと。だったら役割分担して、私は丹精込めてつくられたものをお客さんに出す「間の人」になろうと思って。

K 食材はどこから仕入れているんですか?

真理さん 主となる野菜は佐久の「長谷川治療院農業部」の長谷川純恵さんから毎週お任せで仕入れているんですけど、それ以外も玉ねぎはこの方、玄米はこの方、とか、それぞれの農家さんの得意なものを仕入れさせてもらっていて。

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こちらはある日の朝食。旬の新鮮な野菜がこぼれ落ちそうだ(*)
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ランチのメニューから。色彩の鮮やかさに味の想像が膨らむ(*)

真理さん だけど地球の気候が変わって、特に果樹は毎年すごく苦労されているのが見て取れるんです。しかも、農家さんが高齢化しているんですよね。お菓子に使う小麦粉を使わせてもらっている南牧村の有坂さんご夫婦も、元気だけどやっぱり高齢で、後継者がいない。
これから原料や資源が貴重になってくる時代になるのに、それを守ってくれている生産者の方がいなくなったら……だからもう、簡単に仕入れられる時代じゃない、いま食卓にあるものが100年後の未来も食べ続けられるのかわからない。そういう思いが、ここ数年すごくあります。

〔編注〕農家の高齢化について

農林水産省のHPによると、日本国内の個人経営体(個人や世帯)の基幹的農業従事者(農業を主として働いている人)は、2020年度で136万3000人(2005年度は224万1000人)で、減少傾向にある。うち、65歳以上は94万9000人で、全体の70%を占めている。
一方、20~49歳の基幹的農業従事者は2020年度で14万7000人(全体の10.7%)で、2015年度の12万4000人から増加しているが、2020年度の個人経営体と法人・団体経営体の年齢構成を見ると、49歳以下の割合は前者で12.2%、後者で44.7%と、若年層は法人や団体で農業に従事する傾向が大きい。
なお農業の後継者不足の要因としては、数百万円単位で発生する初期投資と、それに見合った収入を得ることが特に最初の数年は難しい、といった要因が指摘されている。

 風景をつくる人になる

K 「100年後の未来」はMaru Cafeの大切なキーワードですよね。東京とかからもお店を訪れる人がいると思いますが、どんな反応をするんですか?

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