見出し画像

同居人との別れ。

私にはかつて同居人がいた。

同棲生活は結構楽しかった。
“私達の関係は、私達だけが分かっていればいい”

なんて思っていた。

しかし、付き合っていないことが周りにバレると散々な言われようだった。
「同棲してて付き合わないとかクズでしょ」
「遊ばれてるんじゃない?」
「そんな奴やめときなよ」

優しくて尽くしてくれる彼の家と
ボロクソに言われる外の世界。
そのギャップが耐えられなかった。


𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
予定通り2ヶ月後に家が手に入ったため、私は同棲を解消し一人暮らしを再開した。

が、彼は週末よく家に遊びに来た。
一緒にご飯を作ったり、お酒飲んだり、ゲームをしたり、、まるで同棲していた頃のように。

日曜の昼過ぎ。起きてしばらく他愛のない会話をすると彼はいつも自分の家に帰っていく。

急に静かになって何をしていいかわからず、
とりあえずベッドに寝転ぶ。
広く感じるシングルベッドと微かに残る彼の匂い。
脳内再生されるSaucy Dogのシンデレラボーイ。

毎週日曜は泣き疲れるまで泣いて朝方に寝るのがお決まりだった。
月火水と日が経つにつれて徐々に泣く時間が減り、金曜の夜に彼が来る。そして一晩中泣く日曜。


そんなことを1ヶ月ほど繰り返し、
誰も信用できなくなった自分
だけが残った。

都合のいい女を脱却すべく、
会いたい気持ちを押し殺し、連絡を絶った。

連絡は一度も来なかった。

好きなのは私だけか、とまた泣いた。

𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
ある日YouTubeが
“10 things I hate about you”という曲をオススメしてきた。
それは、彼の嫌いなところリストを作って嫌いになろうとする女の子の話だった。
神様のお告げだ!と思い、私もリストを作ってみた。
彼の嫌いなところが意外とスラスラ出てきた。(性格悪い笑)

𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
私は実家に帰ることが決まった。
最後の日、全て本人に言ってやろうと思った。(さっきから性格悪い笑)
箇条書きだったリストを繋ぎ合わせ、セリフを書き出した。

引っ越しの荷造りが終わり、
夜10時
私は彼の家に行った。

インターホンを押し、玄関が開く。
襟付きのシャツにセーターを重ねている彼を見て
やっぱり好きだなぁ、なんて思った。

嫌いなところなんて言えるはずがなかった。

「あのさ、私、彼氏作ってもいいよね?」

これが限界だった。
次の恋に進むために、彼に肯定してほしかった。


「ねぇ、そんなこと言わ…」

彼の腕が私の方に伸びてきた。
引き寄せようとしたのだ。
嬉しくなった。
でもどうせ付き合ってはくれない。
私は一歩下がり、伸びてくる腕をかわした。
玄関のドアに背中がぶつかる。

彼の見たことない表情と続く沈黙。
私は泣くのをグッと堪えた。

「いいよね?うんって言って。お願い。」

「うん……わかった」

初めて聞いた。そんな小さな声。
小さすぎて聞こえないよ。
なんであんたが悲しそうなのさ。
全く連絡してこなかったくせに。
ずるい。

「今までありがとう。じゃあね」
今日1番の笑顔で玄関のドアを閉めた。
いつかこの笑顔を思い出して後悔すればいいと思いながら。

上手く笑えてたかは分からないけど。



𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
実家に帰って、彼の写真を全て消そうと思った。
見ないようにしていたカメラフォルダをスクロールすると、
留学中の海外旅行の写真
同棲中のツーショットや寝顔
言われて嬉しかったメッセージのスクリーンショットが何枚も出てきた。

全て見返し、そっと削除した。
彼の連絡先と共に。


2023/11/21

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?