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三人の記憶:藪の中⑤~マリ先生1〈クラスターの話など〉~【少年小説】
天方くんと面談をしようと決意したあと、放課後にある女性から声をかけられた。
学校に最近やってきたスクールソーシャルワーカーの須加マリ先生だった。試験的に公立高校に1週間に1日だけやってきて今後のかかわりかたなどを検討している段階だった。
背の高い美人で男子生徒たちはマリネエさんと呼ばれているようで話題になっていた。
「小鹿先生、顔色が悪いですけど、ああ、問題の生徒がいるみたいですね」
「え?」
「内緒にしてほしいんですけど、私実は本業はスピリチュアリストなんです」
あまりにも自然体なその表情につい内面を吐露したくなってしまった。
「スピリチュアリストって…たとえば私のリーディングとかできたり、未来をみたりできるってことですか?」
「まあ、そういうことを本業にしているってことです。いますごくなやんでるみたいですけど…生徒さんかしら?ものすごくネガティブな強いエネルギーみたいだから…注意したほうがいいと思います」
直観で感じたこととマリ先生が同じイメージを伝えてくる気がした。
「マリ先生、いま少しだけお話ししてもいいですか?」
「ええ、もう帰るだけですから。先生もお帰りでしたら、今夜一緒に食事でもいかがですか?」
土曜日でもあり、今日の作業はもうやることはない。
「マリ先生、よかったら私のクルマに乗っていきませんか?確かいつもバスで通われてましたよね?」
「ええ、では私のうちまで送ってくれませんか?」
「ええ、じゃあ駐車場に先に行きましょう。先に私のクルマに乗って待っていてください。カバンを職員室にいって持ち帰りますから」
クルマのキーはもっていたのでマリ先生を乗せてから職員室に戻った。マリ先生に見せるのはどうかとも思ったが3人の書いた読書感想文を机の鍵をあけて取り出してカバンに入れた。
「マリ先生は出身はどちらですか?」
「私は北九州市です」
「へえ?どうしてこちらに?」
「大学は東京だったんですけど、就職後に職場ストレスで精神を病んだんです。精神科医だったんですけど、向いてなかったのかもしれません」
「静岡県には希望されて来たんですか?」
「ええ、たまたまです。県の教育委員会の求人をみて申し込みました」
「スピリチュアリストにはいつからなったのですか?」
「心労で医師をやめて静養している頃からです。しばらく学校に通って資格をとっていた頃に、突然でした」
「神秘体験というのかしら?」
「そうですね。信じてはもらえないから誰にも話さないですけどね。お客様に話した以外は知人には誰にも伝えてないわ。それに普通のお付き合いでは素性を明かしたことはないわ」
「では、なんで今回は私には教えてくださったの?」
「なんでかしらね?たぶん小鹿先生のガイドさんから、頼まれた感じがしたからかしら?」
「ガイドって守護霊ってことかしら?」
「ひとそれぞれに一人のハイアーセルフにさらになおいのかみさまという担任みたいなかたがいて、ガイドはその方から依頼を受けたり自主的に指導を請け負ってくれるかたがたで、人数は都度かわるし、さまざまみたいね」
「ハイアーセルフとの違いがよくわからないわ」
「ハイアーセルフはね、よく似た魂のグループのトップにいる存在でね、簡単に言うと未来の完成された人格のあなたのことよ」
「ハイアーセルフは私自身?」
「説明がむずかしいんだけどね…クラスターという魂のかたまりを想像できる?」
「いえ、わからないわ」
「クラスターっていわれるものは、似た性質がかたまってる大きな魂のグループなの。進化の過程を進むと統合が進んでね、要するにグループ化したデータみたいになるわけね。そのデータは集合体でもひとつのデータ名でしょ?つまりたとえばデータ名を銀杏とするとデータの各文章やグラフは別々でもすべては銀杏でしょ?」
「じゃあいま私が生きてるこの状態はクラスターではないのよね?」
「クラスターだけど、単体で派遣されてるって考えてみて。だからそれぞれが出張して個別体験をしてレポートを提出しているみたいな状態ね」
「レポートを提出?だれかとあうことはできるの?」
「夢の中で会ってたり、こつらはわからなくても高次元からはいつも気付かれてることもあるかもね」
「…」
「証拠はないから、実証できないけどね。クラスターは分かれたり統合したりするもので、高次元へ移行するたびに大きくなってくみたいね。ハイアーセルフは6次元の卒業のごほうびとして三次元までのすべてのクラスターをみることができるようね」
「卒業後はどうなるの?」
「7次元へ移行。6次元の時点でも、自分の意識とクラスターの意識は統合されていて三次元のように個人という認識はできにくくなるとラー文書にはかかれているわ」
「ここかしら?マリ先生のおうちは」
「ここよ。ありがとう、クルマは庭に止めてね」
小さな一軒家で、平屋の古い借家だった。
【つづく】
©2023 tomasu mowa