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老年期少年小説 14「還暦少年〈2〉 ひとのかなしみがわからない異端者のかなしみ②」

この年になって、過去に自分がしてきたことを鮮明に思い出すことが多いんですよ。

意外ですが…結構忘れていたはずのことが、はっきりと意識に出てくるんです。

不思議ですが…本当のことで…日々、罪悪感、自責の念、落ち込み、自分は決して許されないという思いで…気が狂いそうなんですよ。

みなさんはそんな思いはしてないでしょう?
それは当然です。

私の場合は、抑え込んでせき止めていたものが、
今になって抑えきれずに噴出してきているような感じなのです。

まるで、死ぬときに自分の人生を走馬灯のように見せられて、
閻魔大王の裁きを受ける話のようです。
まるで、自分はいま死んでいるような感じなのですよ。

普通の大人は、もう若いころにそういった葛藤は終わっているものでしょう?

あなたはどうですか?
私のように、自己批判と自己正当化を繰り返した挙句、
死にたくなったりしていませんか?

私はこの人生を送ってしまった後悔と、
絶望で呼吸が止まるのですよ。

でも、この期に及んで、もしその場面が出てきたり、
同じようなことが起こっても、また同じような行動を繰り返すかもしれないという疑念が消えません。

結局、きれいごとをいったところで…また逃げ出すんじゃないかって。
そこまでして、自分をいじめなくてもいいと思います…自分でも。

もう、昔、そういうことをしてしまい、とても後悔しています。
もう、二度と繰り返したくない。
そう思うのが、ふつうの人間で…大人ってやつでしょうから…。


今日も、買い物に行って帰る1時間のあいだに…
20代の頃から、アルバイト先や勤め先で、
最初はなんとか自分を隠してうまくやってるつもりが、
結局自分の感情爆発を抑えられず、
どこでもトラブルを起こして、
二度とそのひとたちに顔向けできないような状況をつくってきたことが、
繰り返し意識にのぼってくるんですよ。


気に入らない人を無視してしまうとか、
せっかく、やさしくしてくれた人がいたのに、
その気持ちが怖くて、自分が最後には嫌われて孤立するから、
それを味わいたくないから、付き合わないで逃げるとか…
良かれと思って注意してくれている人を逆恨みするだとか…
約束を意識的にすっぽかして、二度と付き合わないようになるだとか…
すべてが力を奪うようなうんざりする子どもじみたパターン…

ことごとく、同じようなパターンで…
それは、いまや…すべて相手ではなく、
自分から起こしていたって…
感づいていることで…
だから、打ちのめされてしまうんです。

そういうことはもうしたくない。
素直に生きたい…そう思っているなら、
前向きに生きられるはずでしょう?
なのに、こんなに落ち込むってことは…
かわりたくないんですねたぶん。

このままで、自分は悪くなかったって、
いまでもそう思いたい部分の意識が、
かわらないでしがみついている感じなんだってことだけは
なんとかわかるんですよ。

【続く】