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還暦過ぎても大盛り――たべもの記2024①「60過ぎてからの二郎系初体験」

引っ越しした住まいから、歩いていけるところに「二郎系」と思われる店ができた。

家系が好きで、よく食べていたが…二郎系に関しては、敬して遠ざけていた。

泉昌之氏だったか…主人公が二郎系の店に初めて行き、よくわからないまま「マシマシ」という台詞を吐くシーンが思い出される。

妻と二人で、この年で二郎系デビューとは…つるかめつるかめ。

噂は聞いてはいたが、はっきり言って頼み方がよくわからない…
聞けばなんとかなるとは思ったが…自動販売機の前で、二人で注文までに5分くらいかかってしまった。

後ろに並んでいる若者は…いかにも二郎系の常連のようにも見える。

普通のラーメン1000円と普通の豚ラーメン1400円を頼んだ。
※双方税込価格

店員の方はすごく親切で、丁寧に説明してくれる。
「麺がゆであがったときに、アブラの量、野菜の量、ニンニクの量を言ってください。この説明を読んで、決めておいてくださいね…」

親切だったが…右端の欄にある「マシ」という言葉が気になった。
これがかの有名な「マシマシ」なのか?…と。

なになに? うーん、マシマシってのは有料で、マシが無料なのか。
各店でそれぞれなのかもしれないが…やはり、気が弱い客には、なかなかハードルは高いかもしれない。

テーブルにはスープの味を調整する「かえし」(記憶違いだったらすいません)という醤油のような調味料と…酢なのかアブラなのか出しなのかわからないが、調味液のようなものがある。そして、生姜!

家系に通った人間には、うれしい発見であった。擂っているというよりは細かく刻んでいるような生姜が小さい壺に入っていた。

チャーシューにつけて、汁にまぜて食べよう。わくわくした。

妻は無邪気に店員にいろいろ聞いていて…結局、
スープを薄めにする以外は「マシマシで」
と伝えていた。

「あのさ、マシマシじゃなくて…マシね」
「マシマシじゃないの?」
「マシマシって有料なんだって…」
「ええ、そうだったの」

「マシマシ」は世の中に浸透している言葉になっているようで…妻もたまに「今日の〇〇はマシマシね」などと使うことがある。

ということだから…少なくとも、この店では、「マシ」と伝えようね。
マシってのは、大盛りって考えると…マシマシは特盛りか? 大盛り無料で特盛りは〇円増しってのはよくあるものね…

妻からは、
「麺はぜんぶはいらないから、少し食べてね」
といわれていた。

もちろん、いいよとは伝えたが…出てきたラーメンを見て、
これは認識が甘かったということを痛いほど感じざるを得なかった。

盛り上がったもやし…まいばすけっとの29円のもやし1袋分は確実にあるであろう。

つうかさ…麺見えへんで…。

妻は大盛り上がりで「おいし~」といいながら、食べ進む。

私も続いて出てきた豚ラーメンにいどむ。

豚肉がポークステーキ3枚だなこりゃ…。

しかし…うまい。テンションが上がったので、一時的に完食の幻想・妄想を抱いた。もやしをまずやっつける。ニンニクマシの分をスープに浸したいが…こぼれそうなので…諦めてまずすべてのもやしごくまれにキャベツ玉ねぎ(なかったかもしれませんが…)を食べつくす。

もやしがなくなった。
よし…これで、マシアブラをかけて…生姜を入れ、かえしを足して…
ああああ…なにすんの?

妻が自分のどんぶりから私に麺のアブラの入っていた茶碗一杯分の麺をよこす。

まあいいでしょう。なんとかなる。
妻の麺をわがどんぶりに入れて、野菜なし状態のラーメンを食べる。

うまい。
家系の麺の倍くらい太い。
よく考えたら、食券のところに300グラムって書いてあった。
茹で麺の300グラムというより、まるで乾麺の300グラムくらいの感じだ。

硬く、讃岐うどんよりこしがある太い麺…まったく消化が進んでいないことがわかる。

しかも私のどんぶりにはポークステーキ大が三枚。
1枚食べ終わっても、麺をまあまあ食べたと思っても…ぜんぜん水位がかわっていない…

還暦過ぎても大盛りに挑戦してきたが…普通盛りで…夏の海で泳いでも泳いでも岸につかない恐怖を感じていた。おぼれてしまうかもしれません。

快調に食べ進めていた妻が、急に「もう無理かもしれない」というまさかの「ごめんなさい」準備宣言。

意地でも…テレ東大食い選手権の一度とまってから食べ進める挑戦者に流れる例のテーマ音楽が頭に響き渡る…。

とは思ったが…単価のことも考えて、私も「ごめんなさい準備」に入ることにした。

豚ラーメンを頼んで豚を残すことはあまりにも申し訳ないので、
生姜、かえしなどをつかって、なんとか食べきった。

麺もスープも申し訳ない量が残った。

二人で店主に頭を下げた。
「ここまで量が多いことを知らずに申し訳ありませんでした。次からは食べきれる量の注文をしますのでお許しを」

快く受け入れてくれた。
お店の方には本当に申し訳ないことをした。

二郎系を愛する方々にも申し訳ない思いだった。
次々に入れ替わり食べて出ていく人たちは、全員が完食していた。

次からは小を頼むことにしよう。

二郎系のすごさを感じることができた。

メッシも好きだといふ…二郎のラーメン
すんげえましまし…

でした。



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