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しゅうかつシリーズ~「せめて、もう一回食べてから…美味過去記憶反芻対談」5〈忘れじの東京B級グルメ店〈神保町周辺編①〉~「ありきたりだけど、天ぷら、天丼、とんかついもやだね」「どれが好きだった?」「天丼かな?安い給料だったから、500円以内で大盛り天丼揚げたてが食べられたんだから。残さなきゃ大盛り無料とか、心意気がよかったよ。給料出たら天ぷらのほうで、海老定食にいか追加してたよ」「無料いぶりがっこがよかったよね」~ ほか〉


模話1「新シリーズだよ」
模話2「これは要するにあなたがいちばん大食いだった頃の記憶を語りたいってことか?」
模話1「うん。まあね。還暦すぎにしては大食いだけどさ、やはり昔みたいに食べられないし、そこまでの執着もなくなったのよ」
模話2「前にさ、食べたいから食べるってよりも、記憶の反芻のために食べるって言ってたよね?」
模話1「うん、ほんとにそんな感じなんだよな。腹へったらやっぱり美味しいしね。満足もするんだけど、このわたくしが食べても食べなくてもどっちでもいいってことが増えてしまったわけよ」
模話2「死期が近いか(笑)」
模話1「まあ、いつ死んでもいいくらいたくさん食べてきたしさあ、たのしかったから、そういう記憶を反芻して読んでくださる方になんか参考になったり、あんな店あったな~とか思っていただきたいわけよ」
模話2「じゃあ、1回目のテーマは?」
模話1「ずばり閉店した忘れじの店〈神保町周辺編〉ね」
模話2「いいね」
模話1「関係ないけどさ、ロックしゅうかつ編で触れたけど、陽水さんのロンドン急行の歌詞に〈忘れじの抱きしめたいの歌〉ってあったよな?」
模話2「うん、正確に調べてはないけど、そう聴こえたよね」
模話1「まだ抱きしめたいの歌を知らないときは、〈忘れジーノ抱きしめたいの歌〉だと思っててさ、〈ジーノが忘れた抱きしめたいの歌〉なのかなってさ。当時は古文分からなかったし」
模話2「ほんと関係ないわ(笑)。でも泉昌之さんのマンガでも〈サヨナラ東海鬣=たてがみ〉のねたあったしね。それにしても、はよ食堂行かんかい(笑)」
模話1「そうであった。いま思い浮かぶのは、小川町にあったラーメン店だね。名前忘れちゃったけど、そもそもこれは店なのかな?って感じの、確か立ち食いだったかな?香港の食堂並みにシンプルな内装でつくるたびに冷蔵庫から取り出しててさ、奥さんらしき方が隣にいるんだけど会話ないし客もしゃべってる人ボクは見たことなかったよ(ピカ一だったかも)」
模話2「マスヒロ先生も書いてた店ね」
模話1「マスヒロ先生はあの手の東京ふうラーメンが好きだよね」
模話2「有名なお店があったよね、立ち食いの(恵比寿ラーメンだったかも)。メンマに海苔にネギにチャーシュー。余計なのいらないって汁まで飲み干してたね。麺のみこんでる感じだったし(笑)」
模話1「噛まないのは西原さんに指摘されてたよな(笑)」
模話2「柴田さんという店主がおなくなりになったあと、西浅草の辺りに移転したのでもわくんの当時の住まいの近くにあったんだよね。行かなかったの?」
模話1「うん、夜からだったかな?たしか。それもあったし、機会はなかったね。ほんとに無化調かも分からずじまいでした」
模話2「小川町のラーメンは味はどうだった?」
模話1「汁がしょっぱめだったかな?澄んだいかにも東京中華そばのスープって感じだったかな? 鶏ガラなのかな? 正確にはわかんないけど、すんごく美味しくてさ、何回か通った。チャーシューもメンマも丁寧につくられてて、麺もいかにも東京ラーメンで好みだった。ある日突然なくなっててがっかりしたよ」
模話2「次の閉店名店は?」
模話1「前にもどっかで書いたんだけど、揚子江菜館の隣の方でスヰート包子のはす向かい方面にあった立ち食い蕎麦屋ね。カドヤの一斗缶が並んでて、痩せた主人が多種の野菜中心の天ぷらを揚げていた」
模話2「安かったらしいね?」
模話1「ご飯が安くて、天ぷら一個にそばにご飯が合計で300円くらいだから、編プロ時代は一日3回食べたこともあるくらい好きだったよ。ご飯は、どんぶりで出てきて、半ライスでも満足できたかな? たいてい100円の半ライスだったな? はっきり言ってよくは覚えてないけど…」
模話2「確か閉店するって新聞に載ったんだよね?」
模話1「それで、当時は市ヶ谷で働いてたから夕方最後の立ち食いそばにご飯を食べに行きました」
模話2「ご主人とは会話したの?」
模話1「うん。詳しい内容は忘れたけど、事情は新聞に出てたから聞かないようにして…昔3食食べたりしてましたとかいかにこの店を好きだったかを話したけど、あんまり話ははずみませんでしたね(笑)」
模話2「野菜天ぷらの種類がすごいね」
模話1「うん。にんじんはにんじん、玉ねぎは玉ねぎ、インゲン、なす、春菊だったか、それぞれを単独でカドヤのゴマ油で揚げてて、おいしかった。そばうどんは、特に記憶ないけど冷やしもあって、ご飯がメニューにあるのが忘れられない。文春風に途中からてんどんに切り替えたり楽しかったよ」
模話2「他は?」
模話1「ありきたりだけど、天ぷら、天丼、とんかついもやだね」
模話2「一部復活してるよね?」
模話1「昔はたくさんあったよね」
模話2「どれが好きだった?」
模話1「天丼かな?安い給料だったから、500円以内で大盛り天丼の揚げたてが食べられたんだから。残さなきゃ大盛り無料とか、心意気がよかったよ。給料出たら天ぷらのほうで、海老定食にいか追加してたよ。ただ並ぶんで昼休みは全部天丼に天ぷら定食のためにつぶれた(笑)」
模話2「確か秋田県出身の創業者だったね。いもやは東北出だからそういう店名にしたとか聞いたよ。無料いぶりがっこがよかったよね」

【続く】
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