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【ロック少年・青年・中年・老年小説集】「中年からのバンドやろうぜ1…〈肥満とブルーズ、減量とロック①〉~Fとの再会~」

コグレユキオは25歳で初めてロックバンドのギタリストとして、
ステージを経験した。

その後、30歳までFとSを中心としたバンド活動を続けて…
最後にSと二人で出演したライブをもって、
バンドを離れた。

その後、ユキオは急に太りだし…33歳になると…
もう過去の知り合いとは誰とも会わないようにしていた。

太ったといわれるのはユキオにはこたえた。
ロックを経験した人間が太るということは、
著名なロックスターでもめずらしいことではないが…
かっこいいことではない。

むしろ、軽蔑していたユキオは、
自分がまさかここまで太るとは思ってもいなかった。
大食いでも太ったことがなかったので…
どうやったらやせていいのかわからない。

少しぐらい食べる量を減らしても体重は減らなかった。
大量に食べる習慣をかえることはできず…
結局太り続けることになった…


ステージを離れたユキオは、
ロックに興味を失い、
黒人音楽、特にブルーズを聴くように変わってしまった。

元々はローリングストーンズやWhoなどの好きなアーティストが
影響を受けたミュージシャンを知りたいと思ったことがスタートであった。


しかし、いつの間にか、黒人音楽を聴くことが重要な目的にかわってしまった。

ミュージックマガジン系の著作物を中心に、
自分が「とぶ」たぐいの音楽を求めてさがし続けたのだった。

ストーンズのプロディガルサンの原曲や、
レッドツェッペリンの作品の原曲などを、
探しあて、それがどういうものなのかを突き止めようと思ったのだ。

どこかで、白人のロックは黒人音楽の借り物というか…
盗んできたものであるという考えにとらわれてしまっていた。

後年、その固定観念から自由になったとき、
ユキオはそれが「父から受け継いだ左寄りの観念による」洗脳のごとき教育が影響しているように思ったりした。

ロックは黒人音楽のがルーツならば…
おおもとをたどってみたい。
ユキオは、そういう強い意識にひっぱられ、
好き嫌いをこえて、アルバムやコンピレーションアルバムをあさった。


そんなある日、バンドで一緒にやっていたFから電話があった。

「コグレさん、久しぶりにスタジオに入りませんか?」
「なんだ、相変わらず勝手な物言いだな?」
「いやですか?」
「おもしろいから入ろうか…」

ユキオは承諾した。