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トートタロット人生相談所⑥「3人の魔術師…御形氏編②」

ボクは御形。
占いで生計を立てている、といいたいところだが、副業含めて4つくらいの仕事をして稼いでいる。

収入はまあまあだ。
トートタロットはマリネさんというスピリチュアリストからもらってから勉強した。

恥ずかしながら、まだ占いは一年生だ。
正直に言うと大半はほかで稼いでいる。

副業のひとつに物書きがあるが、これが思わぬところで成功した。
学生時代に住んだある街の食堂についての詳細な記録を書いたものだ。まさか当たるとは思わなかったが、町中華だとか町食堂のブームに乗ったのか、理由はよくわからないが当たった。まあ、儲かってしまった。

続篇もなぜなのか地道に売れた。うれしいが、浮かれる気持ちにはならなかったので、当時の本業に精を出し、関連の副業を地道にやり、マリネさんから勧められて占いをやっている。

本業をフリーランスにかえてからは少し楽になった。

元々が会社員には向かない。向かないのでこなすために他をやらなくなる傾向が出る。

するとマリネさんに占ってもらった魔術師の性質が出なくなってしまう。
マリネさん曰く、いまの不安定さが魔術師性格を強めるからこのほうがいいんじゃないかとのこと。
まだ40代だからいいが、体力的には衰えてきていて、一頃の地味な会社員時代が懐かしい気もする。
金土曜日や年末年始とかのあの解放感は個人事業主にはないから、時々また就活をしようか迷う。こんなにお金に困らないのがよくわからない。潜在意識の書き換えをマリネさんに教わり、やってみたことが効いたのか?

うまくいってるのに自分から不幸になることは望むわけもない。貯蓄しつつ、この風変わりな商店街の外れの格安物件でしばらくは4つの仕事をしながら、次の事業資金を貯めようと思う。

結婚はしないつもりだ。
一度はミュージシャンを目指したこともあった。

人生ぶれぶれでどういうわけか、周りに恵まれ、食うに困らない生活が続いてしまった。正業もそこそこ信用があり、向いている仕事といえた。

特に不満もなく好きな音楽や本やマンガ、絵画をたのしみ、自分でもかいてきた。
しかし、欠けてることがあることを、ある音楽を聴きに行ったときに知り合ったマリネさんから教えてもらったのだ。

それが霊性の進化ということだった。

聴きに行った音楽はシタールだった。
インドでかなり著名な宗教家のような奏者だった。

日本語はできないが通訳がいて、シタールの歴史からどういうかたちで演奏されてきたかをかなり詳細に説明する、気軽なシタールのゆうべではなく、講義のようで有意義な夜だった。

かつては王公貴族マハラジャの晩餐会で朝方まで演奏されたそうだ。
神事というレベルの演奏は三時間以上聴いても疲れず、奏者の方は最後まで演奏に乱れがないどころか、全盛期ロックのアンコール演奏のように魂に響いた。

あまりに感激してしばらく席から立てずに茫然としていたら、マリネさんから声をかけられた。

なんと奏者に挨拶するから来ないかと言われて、言われるままについていったのだ。

マリネさんは英語が達者で、奏者と笑顔で会話していた。
話の途中でボクのほうをみて奏者に紹介してくれた。

どうでしたかと聞かれたボクは、「日本の神社のお祭りのあとの陶酔状態のような素晴らしい気分です」と自分でも考えてなかったようなことを口走った。

マリネさんは英語に翻訳して伝えると奏者は目を見開いて両手で握手して
くれた。

「神々を感じてくださったことはわたしのはげみになります」と訳された言葉にボクは涙が自然に出てきた。

そのときボクはマリネさんをみた。
彼女は初めみた瞬間「この人は悪魔か天使のどちらかだ」と感じたのだ。

どちらも持っている人で、たぶんボクはすべて見透かされてると直感的に思ったのだ。
それはある意味正解。

マリネさんを渦の中心にして人生は大きく動いていくことになるのだった。

【続く】
©2023 tomas mowa