SDGsおじいちゃん
うちのジジは、全共闘時代の学生にあこがれを持つ、プチ活動家です。本人は、”プチ”はつかない本当の活動家だと思っていますが。
ジジは、5年に一度の核拡散防止条約世界大会に毎回参加していました。(去年はコロナで中止されてしまいましたが、オレは行くんだぁ!と、かなりしつこく粘っていました)8月6日には広島の原爆慰霊祭に、3月1日には焼津までビキニデーの大会に、毎年参列します。(これも去年は叶わず)
さて、SDGsって最近よく耳にしますが、いったい何だ?よく知らない私は、Wikiでお勉強。「持続可能な開発目標」とある。世界中の国で、不平等感が無く、地球を安全に、経済も発展させようぜ!ってことらしい・・・。ザックリ過ぎるか。
その中に、17の世界的目標ってのがあり、読んでみるとどれをとっても大切なことが書いてありました。そうだそうだ、その通りだ!人権だって、環境だって、経済だって、どれも大切さ、でも、私の中では、どことなく、世界のお金を回す一握りのお金持ちが、どれ、ちょっくらSDGsっつうスローガンでも使って一儲けするべさ、というにおいを感じてしまうのです。真面目に働いでいる国連の皆さんごめんなさい。そんなもののバランスをとりながら、生き馬の目を抜く世知辛い世の中で自分の会社を潰さないように立ち回れるCEOさんがいるのであれば、これはもう聖人に違いないと思うのです。
そうか、その点でもう、うちのジジは庶民的なSDGs実践者であります。
ジジはとにかく思いついた欲求に素直であります。
庭に花を植えたいと思いつけば、ホームセンターに行き、かわいいビニールポットをたくさん買い込んできます。が、気持ちはそこで落ち着いてしまい、その後数週間は定植されずに放置されたままです。ごみを捨てる習慣がない彼は、ビニールポットは捨てません。ポットは風の吹くまま気の向くまま、境内を彷徨います。
草を刈ろうと刈払い機を購入するも、ジジの中に”使い終わった後は片付ける”という機能が壊れてしまったので雨ざらしとなり、毎回修理屋さんを呼びつけてエンジンをかけてもらいます。そうそう、小石を飛ばし、ガラス窓に銃弾の穴をあけることも得意技です。
ハイブリッド車というものが世に出るとすぐにプリウスに乗り換え、バッテリーを壊すのはジジの乗り方です。
物理屋さんが”永久機関”と聞くと目を輝かせるように、生物屋さんのジジは”ビオトープ”に反応。お寺の庭に池も作りました。しかしながら、激悪な地球環境のおかげで、なかなか成功しません。だって、暑すぎたり、雨がたくさん降りすぎたり、池の水が少なすぎたり、池に入れる鯉が大きすぎたり、水草が繁殖しすぎたり、困難の数は枚挙にいとまがないのです。(笑)
ジジがペットショップで買ってくる鯉は、およそ3か月毎に昇天いたします。小さい鯉の時には外敵であるお猫様とサギに襲われ、朝の点呼の際に姿を見せず、ジジはため息をつきます。大きい鯉の時には、何らかの病気や水質悪化により、ある朝、背泳ぎスタイルの鯉を発見してジジはため息をつきます。
何度か、「メダカではダメですか?この池の水深では、大きな魚は生存可能性が下がると考えられます。」と提案しましたが、却下されました。娘にまことしやかなことを言われると腹が立つのです。
ジジは、「お寺に来る子供たちに魚を見せたいのだ!」と大きな夢を語るので、じゃあ叶えてやろうと、うちの子に新しい鯉が放流されたことを話すと、それはもう大喜び、早速池に入りつかみ取りを始めました。もちろんジジは激怒です。鯉と遊ぶことは想定外です。
ある日、午前中の用事を済ませて帰ってみると、玄関先から生臭いにおいが漂いました。玄関と言わず、リビングと言わず、キッチンと言わず、そこら中から腐った魚のにおいとババのキンキン声がしています。どうやらこの朝も、鯉が昇天したようなのです。
いつもと違うのは、その鯉が、台所のまな板の上に安置されていたことです。あらら。ババのキンキン声も納得です。二人が戦闘モードにある時に近づくことは我が身を危険にさらすことだと知っている私は、ひとまずその場を立ち去りました。
数時間が経ち、
次に見た時には、台所の壁と言わず、床と言わず、シンクの中と言わず、キッチンの模様替えをしたかのように水玉模様で飾られたキッチン。何かがキラキラしているゥ。
目の悪い私はその正体がつかめずにその水玉のひとつを拾い上げると鱗でした。
あー。ジジ、鱗とったんだねー。
いつもは、誰のせいで死んだのか、をテーマに夫婦間で壮絶な争いが繰り広げられますが、この時は終了していたようだったので、安心した私はババを隔離し、キッチンのお掃除です。なかなか生臭い匂いが取れずに苦労しました。またゴキブリと共存共栄なのであります。
ここで、私は匂いと鱗に騙されて、とても重要なことの確認をしていなかったのでした。
さて翌朝。
朝ごはんの材料を求めてぼんやりと冷凍庫をガブリと開けると、(あら、ババったらとうとうニンジンを凍らせたか)と大きなニンジンの入っている白いスーパーの袋を手に取ると、何だか少し違うのです。にんじんはアイスクリームのコーンの形、でも、私が触ったのは真ん中が膨らんでいます。
そう、まるで魚のように・・・・・・・・・。
冷凍庫の一等地に冷凍保存されていました。鯉です。
ジジはこれからどうするつもりなのでしょうか。
その日から、約1か月経っていますが、鯉はそのままです。誰も気にしません。
今日も窓を大きくあけながら、温暖化のニュースを見てクーラーをかけます。感染症防止でしょうか。冷凍庫の鱗をはがされた鯉は、科学技術を駆使して生まれ変わる時を待っているのでしょうか。甘露煮にでもするつもりなのでしょうか。
私が鯉だったら、早く土に返してほしいです。
私は活動家ではないので、池で死んだ鯉の甘露煮は食べたくないです。
私は、いつも思っています。
地球のことを思う前に、うちの中のことを整えろ!
世界の平和を叫ぶ前に、うちの中の平和を保て!
それができない奴にSDGsなんか語る資格は無い!
ちょっとすっきりしました。吐き出すって素敵です。
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