記録 2024.10.2X
はじめてタトゥーをいれた
長い間漠然と「タイミングが来たら」と思ってた
なぜ今かという理由はないけれど
今しかないかもとも思った
初めて彫るなら、といろいろ想像して
でもこれまでの想像も合わせても
お願いしたい人は1人しか考えられなくて
気が変わらないうちにすぐ連絡した
自分の体に残すなら
ずっと変わらないものがいいなと思っていた
白い紙に新しい宇宙を
たくさん書いてもらって、選んだ
部屋の中は風でいっぱいになった
一つ一つの曲線がしなやかでやさしい
彫るという行為は
とつとつとつ
ずいぶん静かで厳かなものだった
とつとつとつ
そしてひとつも痛くなかった
とつとつとつ
私はうとうとする余裕さえあった
とつとつとつ
浅い眠りのなかで2色の放射光をみた
気がした
皮膚を触った時の凹凸や
クリームの海みたいな匂い
ひとつの大好きな曲を連想して
ああこの宇宙は正式にあたしのものなのね
て、うれしかった
そして「はじめて」が
いかに特別で美しくて幸せなのかを
帰り道にこっそり思い出した
案の定かぶれちゃったので
少しだけ我慢して
約束をやぶって、
シールを2日後に剥がした
現れた線は肌の中で静かに伸縮した
いまは
朝起きるたびに、夜眠るたびに、
宇宙の隙間に触れるたびに
肌が泡立って身体がしびれるほどに
嬉しい
渡部有希
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