#51 さぼり家＠早稲田鶴巻町

大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。

2006年3月21日、早稲田鶴巻町に住んでいるときに、早大通りに新しい店がオープンした。以前、何があったのかまったく覚えていないのだけれど、最初にこの店の店舗ファサードを見たときには、かなり驚いた。

看板には「さぼり家」とあった。「メルヘン喫茶」とも書かれている。これまで自分が見てきた飲食店とはまったく違うタイプで、ちょっとどぎまぎした。

縦位置で撮影している画像があった。これを見ると隣が「びっくりラーメン」だったんだね。この連載でも取り上げている「びっくりラーメン」。その時に思っていた場所は一軒左の角だと思っていた。人間の記憶ってけっこうあいまいだね。

なんだか普通の食堂のようなメニューのようなだけれど、フロアには女性が３人ほどいて、なんのコスプレかはよくわからないけれど、ひらひらした衣装などを着ていた。よく覚えていないがメイド風だったかもしれない。

最初は緊張しながら、むろあじの定食をいただいた。
880円だった。
住んでいる場所のすぐ近くだったので、何度かうかがったが、だんだんわかってきたのが家族経営で、フロアの女性も初日は何人かいたが、そのうち1人になった。両親が厨房をやっているようだった。
風変りなお店だけれど、ご飯は悪くなかったので、何度か足を運んだ。
しかし、ある日、なんの前触れもなく店を閉めてしまった。

その後、この場所は預言カフェになった。
キリスト教系の団体が運営していたのだけれど、コーヒーを注文するとその人の人生について預言してもらえるというサービスをやっていて、けっこう人気があった。

自分が知っているのはここまでで、早稲田鶴巻町を去った。その後、富久町に引っ越し、知り合った女性といっしょに暮らし、その後結婚した。富久町から新宿7丁目に引っ越し、それから台東区の北上野に引っ越し、現在の入谷という具合に移動してきた。

そして、久しぶりにこの地を訪れると、「さぼり家」があった場所は「ヘアカラー専門店　髪染本舗COULEUR」になっていた。これまた少し変わった店だ。上の写真では右側のビル、非常階段が青い方ね。昔とまったく変わってないね。

ちなみに「びっくりラーメン」のあったところには創作中華・天心　チャイというお店が入っている。
実はこの店がオープンしたこと、最初に行ったときのことをミクシィ日記に綴っていた。ミクシィ日記というのがなんともなつかしい。ここに転載しようかとも思ったが、なんだか今の気持ちとかけ離れている気がして、転載はやめた。マイミク（なんだか懐かしい）の方は僕の2006年3月22日の日記を興味があれば見てほしい。ミクシィは今も存在しているけれど、なんだかレガシーな感じだな。

【プロフィール】
下関マグロ（しものせき・まぐろ）
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド！モーニング」、テレビ東京「７スタライブ」「なないろ日和！」、日本テレビ「ヒルナンデス！」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。

ツイッター　https://twitter.com/maguro_shimo

【著書】
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