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#48 道供養之塔脇のお地蔵さま@三鷹市牟礼

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さまを探しながら歩いています。

お地蔵さまとの出会いで、僕が理想とするのは、散歩の途中でいきなり出くわすというものだ。お寺の境内などではなく、路傍にたたずんでいるお地蔵さまが好きだ。

先日、三鷹市で取材を終え、ちょっと遠回りをして吉祥寺駅まで歩くことにした。住居表示が三鷹市牟礼になっていて、ああ、懐かしいなぁと思った。1978年、僕は一浪して、東京の大学を受験するのだが、実家は山口県なので、東京でどこか宿を探さなくてはならない。現役で受験したときは代々木にあるオリンピック選手村に宿泊した。そして、一浪のとき、同級生のKくんが「うちのマンションに泊まっていいよ」と言ってくれた。Kくんも受験をするために親が所有するマンションに泊まるので、いっしょにどうかというのだ。

そのマンションがあった場所が三鷹市牟礼あたりだった。なぜこの地名を覚えているかと言えば、僕やKくんの実家がある山口県の防府市にも牟礼という地名があったからだ。そんなことを思い出しながら歩いていると、眼の前にお地蔵さまが現れた。

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花や水が供えられて、よくお世話されているのはわかる。名前はわからないが、隣には「道供養の塔」と書かれた石碑があった。日本人はいろいろなものを供養する。針供養だとか有名だけど、道供養というのは珍しい。

さて、お地蔵さまは帽子や涎掛けなども着せてもらっている。毛糸の手編みというのが人のぬくもりがあっていいね。手を合わせてお参りをする。

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とてもやさしいお顔だ。お社の柱には何やら文字があるけれど、よくわからない。「開運」という文字だけはよくわかる。次は地蔵だろうか。だとすれば、「開運地蔵」か。

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お菓子なども供えられている。手を合わせながら、自分が受験のため上京したときのことに思いを馳せた。Kくんのマンションから、バスで吉祥寺駅まで行ったこと。前年の受験はすべて落ちたから浪人したんだけれど、一浪してのぞんだ東京の大学もすべて落ちてしまった。当時僕は広島市内の予備校に通っていて、その予備校で大学の試験が行われた。本格的な大学受験が始まる前で、腕試し的に意味合いで試験を受けたのだが、結局合格したのは、その大学だけだった。それが桃山学院大学という大阪の大学だった。僕はいくつもりはなくて2浪しようとおもっていたのだが、祖母が「せっかく受かったんじゃから行きさん」と行ったので、行くことにしたのだ。

大学生活は東京で送ろうと思っていた僕だが、期せずして大阪で生活することになった。しかも5年間も大阪にいたのだ。Kくんのマンションにいたときはこちらのお地蔵さまには遭遇しなかった。だから、受験に失敗したのか。まあ、還暦過ぎたけど、このお地蔵さまにお逢いできてよかった。


【プロフィール】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。

ツイッター https://twitter.com/maguro_shimo

【著書】
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