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事業承継の準備~オーナーが60歳になったらまず考えるべきこと~

昨今、「事業承継」について関心が高まっております。経営者の高齢化も進んでおり、経営者交代率は長期にわたって下落傾向にあります。傾向から考えると、今後事業承継件数がより増加すると考えられますが、事業承継を即時で行うことは難しいとされています。そこで不測の事態を考慮し、事前に準備するべき事項を解説します。


事業承継まず考えるべきリスト


● 事業承継準備に対する必要性の認識
● 経営状況の把握
● 後継者課題の把握
● 事業承継計画の策定

事業承継準備に対する必要性の認識

事業承継の準備について、最も大事なことは「承継準備の必要性をオーナーが強く理解しておくこと」だといわれています。オーナーに対して、事業承継を促すようなアドバイスをする人は社内にはなかなかおらず、オーナー自身も、何歳になってもいつまでも現役だと認識していることが多いです。そのまま、事業承継の問題を放置し続け、やっと承継や引き継ぎを意識し始めて準備に着手し、専門家のもとを訪れた時には既に手遅れになっていたという事例もあります。

一般的に、後継者教育等の準備に要する期間から逆算すると、経営者が概ね60歳に達した頃には事業承継の準備を開始することが望ましいとされています。60歳を超えて経営に携わっている場合は、まずは専門家(税理士や金融機関)に相談し、事業承継に向けた準備に着手をはじめましょう。

また、事業承継に向けた準備は早くしすぎてしすぎることはありません。早く準備をすればするだけ、事業承継においてとり得る選択肢は広がります。40代、50代から将来の事業承継に向けた情報収集を積極的に行い事業運営の将来の方向性を見据えておくことも非常に大きな価値があると言えます。

上記の現状を踏まえ、事業承継に向けた準備状況の確認や、次に行うべきことの提案等、国が事業承継を促進しています。事業承継に関する対話のきっかけとなる「事業承継診断」の実施や、事業承継ガイドラインの改訂等が行われています。

経営状況・事業承継課題の把握

経営状態の確認
経営状況の見える化を行うことで、経営者自らの理解だけではなく、関係者に対して自社の状態を明示し、事業承継計画作成をスムーズに行うことにつながります。具体的に確認すべき事項を下記に記載します。

● オーナー保有の不動産で、事業利用しているものの有無、当該不動産に対する会社借入に付随した担保設定、オーナーと会社間の貸借、経営者保証の有無等いった法人と個人の関係の明確化、所有の分離の進行。
● 適正な決算処理が行われているかの確認
● 保有する自社株式の数を確認するとともに株式評価実施の依頼
● 商品毎の月次の売上・費用(部門別損益)の分析を通じた自社商品の把握や、製製造ラインの課題の把握、在庫の売れ筋・不良の把握や鑑定評価の実施等

承継課題の認識
承継課題に関してはまず、後継者候補の有無を確認する必要があります。候補がいる場合は、承継に係る意思確認の時期や、候補者の経営者としての能力、適性、年齢、意欲等を踏まえ、後継者として能力、人格ともに相応しいかどうかを検討します。親族内承継であれば、相続財産を特定し、相続税額の試算、納税方法等を検討します。後継者候補がいない場合や会社の成長戦略の実現のために他の会社との連携を必要とする場合など、第三者での売却(M&A)も視野に入れる必要があります。

事業承継計画の策定

会社の経営状態、課題認識を行った後に、事業承継を進行させていきます。具体的に事業承継を進めていくにあたっては、自社や自社の置かれている市場環境を整理した上で、会社の10年後を見据え、いつ、どのように、何を、誰に承継するのかについて、具体的な計画を立てておかなければなりません。この一連の計画が、事業承継計画となります。また、この事業承継計画は、後継者や親族と共同で、取引先や従業員、取引金融機関等との関係を念頭に置いて策定し、策定後は、これらの一部関係者(後継者や取引金融機関)と共有しておくべきだと思われます。

社内に後継者がいる場合の計画
まず、自社の状況とリスク等の詳細把握データを基に中長期的な方向性・目標を設定します。(中期経営計画の策定)

例えば、10 年後に向けて現在の事業を拡大させるか、撤退させるか、新事業に挑戦するのか、といったイメージをすることが必要です。この方向性に基づいて組織体制や、設備投資計画等を検討し、さらに、売上や利益、シェアといった具体的な指標を計画に落とし込みます。

この過程内で、事業承継の実行タイミングを織り込みます。事業承継後に目標達成にコミットするのは後継者となりますので、後継者とともに目標設定を行うべきです。その際、事業承継後に後継者が行う取組みについても中長期目標に織り込むことができれば、更なる事業拡大、再成長も期待できるでしょう。

次に、策定した中長期目標を踏まえ、資産・経営の承継の時期を盛り込んだ事業承継計画を策定します。この際、事業承継計画書の作成自体を目的とするのではなく、策定プロセスにおいて現経営者と後継者、従業員等のステークホルダー間で計画策定の意識の共有化を図ることに重きをおくことが重要です。

社内に後継者がいない場合の計画
後継者不在等のため、親族や従業員以外の第三者に事業引継ぎを行う場合、上記の中期経営計画書を作成したあとに事業承継計画策定を行うのではなく、M&A専門家に相談を行いましょう。そして、適切な買収候補先への捜索へと舵を切ることとなります。

まとめ:事業承継の準備にやるべきこと

事業承継は即時実行できるものではなく、数年の時間をかけて行うものとなります。その中で、さまざまな検討事項がある上に、ステークホルダーとの共有も重要とされ、難易度が高い業務となります。そのため、まずは「事業承継」を意識することから始め事業承継やM&Aの専門家に相談し、時すでに遅しとならないように準備をしていきましょう。

参照資料:事業承継ガイドラインhttps://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/161205shoukei1.pdf

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