木曜ドラマ「silent」1話感想
始まって1分で、このドラマ好きかも、と思った。空気感が坂元裕二作品みたいだったから。もっと言うと、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」みたいだった。
調べてみると、その感覚は正しかった。脚本の生方美久の最も敬愛する脚本家は坂元裕二だそうで、音楽を担当する得田真裕は「いつ恋」を手がけていたまさにその人だった。ドンピシャすぎる。肌馴染みのよさに、合点がいった。自分にとって「いつ恋」は、何周も何周もしている人生ベストドラマのひとつなのだ。その面影を色濃く感じさせるドラマに出会えた。学生時代好きだった人に久しぶりに会う、みたいな期待感に胸が高鳴る。
まだ1話なので、まずは主要3人のキャスティングが良かったという話をしたい。
まず、鈴鹿央士について。
こないだまでMIU404やドラゴン桜で高校生役だった彼が既に社会人役をやってることに時の流れを感じてしまうが、そんなことより、本作での彼の演技は素晴らしかった。「何を言えるかが知性、何を言わないかが品性」とは言ったものだが、彼の姿からは品性を感じた。作中で川口春奈も言っていたような、優しすぎる品性だ。槇原敬之の「林檎の花」の「君」が思い出される。(是非聴いてほしい)
まわりの幸せのために、自分の思いを閉じ込めてしまえる彼は幸せになりにくいんじゃないかと勝手に心配してしまう。その彼が居酒屋で「普通に話したいよ」と絞り出したのは切実な本音だろう。その発言も、その「普通」ってなんだよ?聴者側の想像できる範囲でしかない「普通」だろ?とか言われたら立つ瀬がないだろうが、かなり気がまわるはずの彼がそんな不用意なことを口にしてしまうくらいにはいっぱいいっぱいに抱え込んでるのだと思うと、痛ましかった。そういう繊細さを感じさせる、鈴鹿くんの演技が素晴らしかった。ファンになりそう。
次に、川口春奈について。
彼女がイヤホンをしてるシーンは、めちゃくちゃ似合ってて好きだった。というか既視感があった。そして思い出した。川口春奈×音楽といえば、LISMOのCMだ。あの頃のLISMOのCMは名作揃いだった。ねごと、Galileo Galilei(これを書いてる日に活動再開が発表された。嬉しいありがとう!)など、閃光ライオット世代のアーティストの曲がCMソングとなって輝いていた。その中で川口春奈はWEAVERが流れるCMで踊っていた。懐かしい。2010年だそうだ。12年前かよ。川口春奈は15歳でも27歳でも良い意味であんまり変わらないなと思った。27歳で高校生パートもできるのはすごい。
昔から変わらない川口春奈の持つ、変な屈折や翳を感じさせないまっすぐな明るい雰囲気が残りの主要キャストふたりとバランスが取れていて、すごく良いなと思った。
最後に、目黒蓮について。
自分は彼を、去年観た滝沢歌舞伎ZEROで知った。それからはSnowManの中の推しメンだ。キスマイの玉森くんと並んで、演技が上手いジャニーズだと思う。彼目線のパートがあまり無かったのでまだ言及できることがそれほどないが、1話最後の感情が溢れるシーンの演技は胸に迫るものがあった。文脈の持つ力を自身の表情と動きだけで訴えるのはかなり凄いんじゃないか?
冬には「月の満ち欠け」の公開も迫っている。劇場に足を運ぶ理由に、彼の演技は充分かもしれない。
脇を固める俳優陣も観たいと思わせてくれる人ばかりだった。3人の関係だけでなく、群像劇的なところも楽しみなキャスト陣だと思う。個人的には風間くんが楽しみ。
作品のテーマについても1話の時点の印象として書き残しておきたい。
言葉と身体言語・雄弁と沈黙・パロールとエクリチュール(話し言葉と書き言葉)のようなテーマは、コロナ禍において生活の中での人との繋がりを意識させられたことによって、重要性を増した。このドラマは繋がるための「魔法のコトバ」を探す物語なのかもしれない。自分は空気を振動させてそれを媒介にするタイプのコミュニケーションに頼る機会が圧倒的に多い。だが、コミュニケーションにおいて重要なのは方法ではなく、伝わるかどうかだ。手話がどうだ、という話ではない。コミュニケーション自体をどう捉えていくのか、という視点を持たされた視聴者は全員、当事者性とある種の切実さを伴ってこのドラマを観ることになるだろう。
これから毎週木曜日が楽しみだ。
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