見出し画像

夏みかんにご用心

2ヶ月ほど前に夏みかんがたくさん採れた記事を書きました。
その時は2日間で300個ほどを収穫し、何十個も食べ、何十人もの人に配って喜ばれ、とても満足していたのですが、しばらく経つとムズムズしてきました。
また採りたくなってきたのです。
夏みかんの木の高い所にはまだまだ実がある。
まだ200個はっている。“鳴っている”と表現してもいいほどです。

脚立の上にまたがり、時には脚立の天板の上に立ち、狙いの夏みかんに向けて高枝切り鋏を伸ばし、実に付いている枝の辺りへ鋏の刃元を差し入れ、手元のグリップをぐっと握ります。
切れた手応えがあると夏みかんは枝を離れ落下していきます。バサバサッ、ボトッ。
うまく切り落とせると快感があります。
一つ切って落とすと、次に狙いを定めます。
次から次へと切っては落としたくなります。

ロックオンしたら逃さない

また沢山採って多くの人に配り、また喜ばれたい。
数十人に配りました。みなさん口々に「美味しかったよー」と言ってくれました。
脚立の上に立って採れる実はあらかた採ってしまいましたが、まだまだ高い所には何百個と生っています。
よーし、今度は脚立を開いて、ハシゴとして登って採ることにしよう。
2メートル近く高さをかせげます。

そのハシゴ作戦で夢中になって切りまくり、新たに100個ほどが収穫できました。
枝に立て掛けたハシゴが何度も滑って、冷や汗をかきましたが。
たくさん採れたのでとても満足です。
帰りすがら知人を見つけたので何個かあげて、その知人と一緒にいた知らない人にもあげたりしました。
庭で工事をしている職人さんたちにも剥いて振る舞いました。
お土産として持って帰ってもらいました。
みなさん喜んでくれました。

しかし木のさらに高いところにはまだまだ生っています。
100個以上あります。
また採りたい。
また喜ばれたい。
よーし、今度は脚立から枝へ移り、よじ登って採ってやろう。

後日登ってみると、枝は思いのほかしなやかで強そうです。
大丈夫だ。
ひょいひょいと猿のように登っていきます。
58歳だけどまだまだ身軽です。
高枝切り鋏が手に持っていられなくなると、実が手に届くところまでよじ登っていって、直接手で”もいで”いきます。もいだら下へ落とします。
どんどん登って、どんどんもいで、どんどん落としていきます。
若い枝にはトゲがあるようで腕が生傷だらけになりました。しかし何のそのです。
服もカギ裂きに破れました。それがどうしたです。
やはり祖先は樹上生活をしていたのでしょう。野生に帰ったようで興奮します。

地上5メートルくらい
下を見るとこんな感じ
黄色く見えているのが落とした夏みかん

今度も100個以上は採ったでしょう。
もうあとは届きそうにない所に数個あるだけになりました。
累計で500個は超えたと思います。
大満足です。
多くの人に、また来年お願いねと言われてます。
来年が待ち遠しい。

・・・と、牧歌的になっていてどうする。
これはただ危なっかしいだけの話でした。
これを毎年続けていたら、ボクはいつか木から落っこちて痛い目に遭うでしょう。
痛い目どころか死んでしまうかも。
実際何度もヒヤリとしました。
最初の時の脚立だって、天板の上に立つことなんてもってのほか、本来は脚立をまたぐことさえも禁止とされています。
これまではたまさか運が良かっただけなのです。

しかし来年もやめられないでしょう。
わかっちゃいるけどやめられない、のです。
もう気持ち良くて。
中毒化したようです。
依存症になったと言ってもいい。

夏みかんを切り落とすたびにドーパミンが出ました。
ドーパミンは何かを達成して興奮した時に出る脳内麻薬です。
やり遂げた、勝った、クリアした、ゲットした時などに出ます。
そしてそこまでに至る過程に困難や危険が伴うほど、ドーパミンは多量に出ます。
夏みかんが届きにくい所にあるほうが、切り落とした時の快感は高まります。
危うく落ちそうになってハラハラ、ヒヤヒヤしたほうがキモチイイ。
そうやって人類はリスクを取って進歩してきたんだ。

しかもドーパミンに加えて、オキシトシンも出ました。
オキシトシンは愛情ホルモンとも呼ばれ、親密な人間関係などで幸福感を感じた時に出る脳内麻薬です。
夏みかんを人にあげて喜んでもらった時、オキシトシンが出てじつに気持ちよかったのでした。

そう言えば何らかのパズルを解かせるスマホゲームで、正解すると貧困や寒風にあえいでいた親子がストーブや温かい食事にありつける、という設定のゲームがあります。
パズルを解いた達成感のドーパミン快楽だけでなく、可哀想な親子に喜んでもらえる幸福感のオキシトシン快楽も狙っているゲームですね。
ゲームの世界は狡猾です。

それはともかく厄介なのは、リスクが大きければ快感も大きくなることです。
超人気大リーガーの口座から勝手に大金を引き出すリスクは、バレた時の騒動の大きさを考えると、そのギャンブルはシビれにシビれたことでしょう。

どうやら脳は、命に関わる危険かどうか、社会的に許されるか否か、その見分けがつかず、ただただヒヤヒヤする快感を求めているだけなのでしょう。
今、枝が折れて落ちたら死ぬかもとか、負けてバレたら球団クビだけではすまないな、なんてことは分からず、おーヒリヒリするぜーキモチイイーってなっているのでしょう。
ね。脳は見分けがついてない。
脳はアホでいろいろ見分けがついていないのです。
夏みかんの木の下のシロツメクサとカタバミの違いが分からないように。

夏みかんは心の鍵〜を〜甘ーくするわ、ご用心♪
あぶない♪
あぶない♪
夏みかんはホントに、ご用心〜♪
古いな。また歌って誤魔化している。それではまた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?