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鎮魂の光の花束と新潟の風土 Noism1 山田うん振付「Endless opening」at clubhouse 20220112 

※このnoteは2022年1月12日(水)22:00からのclubhouseでの発表用メモに加筆修正したものです。clubehouseリンクも貼っておきますので、ご興味を持たれましたらご参加頂ければ嬉しいです。

主催:公益財団法人新潟市芸術文化振興財団
共催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場(東京公演)
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
製作:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
初演:2021年12月17日
プロダクション:Noism0 / Noism1「境界」

演出振付:山田うん
音楽:A. ボロディン 弦楽四重奏曲第2番
衣裳:飯嶋久美子
出演:Noism1(ジョフォア・ポプラヴスキー、井本星那、三好綾音、中尾洸太、庄島さくら、庄島すみれ、坪田光、中村友美、樋浦瞳)

会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館(新潟) / 東京芸術劇場(東京) / 高知市文化プラザかるぽーと(高知宇)

Noism      ホームページから抜粋

新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあに所属するコンテンポラリー舞踊団NoismにCo.山田うんの山田うんさんが振付た作品です。NoismもCo.山田うんも世界的な評価を得ているコンテンポラリーダンスカンパニーであり、特にNoismは日本で唯一の劇場付きコンテンポラリー舞踊団という特長を持っています。

■作品概要

ボロディンの弦楽四重奏にのせてNoism1のダンサー9名が踊ります。曲調の通り明るく軽やかでクラッシックの美しい動きを取り入れつつシンプルな動きです。9名全員が等しく世界の構成員として存在し、ヒエラルキーのない世界。ダンサーは自然の構成要素の一つのように踊ります。透明感のある綺麗な色の布の衣装は、鮮やかで美しい自然の色を想起させます。

公演パンフレットには振付た山田うんが以下のようにコメントと構成を記しています。

鍛え上げられた舞踊家だけに宿る華があります。Noism1の9人の華に魅せられて創作しました。信濃川のほとりを歩くと、水面を蹴る光、厚い白雲、草の匂いを感じながらその全てが心地よく新鮮で、私に創造する力を与えてくれました。Noismの一人一人の身体に、ここ新潟にしかない豊かな時間や風景、風の匂いが宿っていて、なんて美しい、と思うことばかりの滞在で生まれた作品です。

鎮魂をテーマに創作し続けた2021年を締めくくる今作は喪失感や虚無感を優しく撫でる光のカーテン。観客の皆様にそっと寄り添う、時間の花束のような舞踊をお届けできたら、境界という不確かな美を感じていただけたら幸いです。

1楽章
風のような姿 花のような香り
2楽章
誰かに手を伸ばしたくなる
3楽章
この大海原に誕生の祝福
4楽章
種子 突風に乗って つと 

公演パンフレット

■新潟の風土

各楽章につけられたタイトルの通りの情景が浮かぶような素直で美しい作品でした。

では山田うんさんに創作の力を与えたという新潟の風土はどういうものなのでしょうか。私は訪れた事が無いので、少し調べてみました。

うんさんは主に2021年10月の3週間と11月の3週間、りゅーとぴあでこの作品を振付たようです。りゅーとぴあは新潟市を流れる信濃川のすぐ隣に建っています。うんさんのTwitterを見ると日々信濃川の土手を歩き、河川敷で過ごし、りゅーとぴあのリハーサルルームからそれらの景色を眺めていたようです。

新潟市は信濃川が作った新潟平野の河口の街です。大河が海にそそぐ手前ですから、川は広く緩やかな姿で流れています。

新潟は潟の字が表すように元々は湿地で今も水の豊富な土地です。

加えて新潟の気候です。秋から冬にかけては降水量が多く日照時間は短い特長があります。日本海沿岸には暖流である対馬海流が流れています。大陸からは乾いた冷たい北西の季節風が吹きます。それが相対的に暖かい日本海の海上に吹き出すと、海面から大量の熱や水蒸気の補給を受けて暖かく湿った空気に変質し、大気の状態が不安定となって対流が起こり、積雲が発生します。このため新潟では秋冬に雷がなるそうです。

うんさんが書いた厚い白雲はこの雲のことでした。

また新潟市の天気は1日の中でくるくると変わるようです。毎日雨も降るけれど晴れもする。日常的に水たまりがあるんでしょうか。

冬でも湿気を帯びた空気は肌にも喉にもよく、気温の割りにさすような空気という風ではないようです。空には厚い白雲もあります。ここに暮らす人にとって、世界は人を包み込むものとしてあるのかもしれない。白雲の輪郭を光らせる太陽の光、日々色づく木々の葉と草、いたるところにある水面はそれらを鏡のように写しています。

まるで今回の作品を紹介する言葉のようです。

死者に手向ける花束のような作品がこの景色の中で生まれました。

ダンスは説明ではなく、その世界を感じさせてくれます。それがいいのです。この作品を通じて新潟の人や風土と一辺でつながれる可能性を与えてくれるのです。

■鎮魂の踊り

後で知りましたが山田うんさんは風土を意識した作品作りをされているようです。

人には気付かぬうちに土地の風土、歴史、文化が沁み込んでいますし、人は意識せずにじみ出るもので人とコミュニケーションしています。ですから風土は人と人をつなぐ大きな要素の一つです。

この作品は鎮魂をテーマに作成された一連のしめくくりの作品です。
前々回あつかった「あなたへ Dears」も同じく死を契機に作られた作品でした。

どちらも生のエネルギーを感じさせるものでありながら、今作は死という現象を自然の中で捉え生命の営みに還元し、他方は社会の中で生きていく人の力を伝えてきました。

優劣ではないのですが、随分違いますね。

踊りだこういう違いをそのままに受け入れて、お互いを感じ合えるのもいいところです。

■発表後記

clubhouseの本編発表後のコメントタイムで出た話題など、トピックスになるものがあれば、後程追記いたします。

■clubhouse情報

2022年1月12日(水)22:00~22:30(予定)
前説5分+本編(このnote部分)5分+コメントタイム15分

この社会の中で、人がどうやってつながっていけるのか、その可能性を身体、風土、歴史、文化から探っています。無意識の内に人の中に沁み込んでいる世界の見方に出会い、同じく無意識ににじみ出ている何かで人とつながることを体験していきたい。

そういうミュニケーションがこれからはより一層大事と思っています。それは社会のセーフティーネットであり未来を作ります。人間を強く元気にします。

clubhouseでは、ダンス作品や映画などのレビューを通して、それに取り組んでいます。

■作品関連情報リンク


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