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【Genii 2023.12.】Jeanette Andrews: Genii 2023 Dec.を読んで

世界最大規模のマジック雑誌Genii Magazineの2023年12月号の感想です。だいぶ更新が遅くなってしまいました。
Podcastの方では一足先にしゃべっていますので、ぜひそちらもお聞きください。(内容の重複が当然あります)

今回のカバーストーリーは、Jeanette Andrews(ジャネット・アンドリュース。たぶん。)というマジシャン。私は今回の記事をきっかけに知りましたが、アメリカで活躍する女性マジシャンです。

2023年12月号の表紙

現代アートとしてのマジックを目指すJeanette Andrewsの旅

Jeanette Andrews氏はSensory Contemporary Artistと記事のサブタイトルがついていました。「感覚に訴える現代アーティスト」と言ったところでしょうか。彼女のウェブサイトにも"Sensory Illusion"とタグラインがついています。

そもそも彼女は、ジークフリード&ロイ(Siegfried & Roy)をテレビで見て憧れて小さい頃からマジックをはじめ、彼らに手紙とかも送り続けて関係性が続いていたようです。10代の頃はシカゴ拠点ということもあり、アーサー・トレース(Arthur Trace)やユージン・バーガー(Eugene Burger)に師事したとのことで、まぁ、錚々たるマジシャンたちに若いときから囲まれていたようです。余談ですがアーサー・トレースはこの人。

記事を読んでいると、彼女はどうやら、マジックに要求される技術的なスキルを、音楽のそれと比較したときに、熟練したマジシャンになるために必要なスキルの複雑さとコミットメントに対して、一般の人々が理解しないことに対する嘆きが、彼女の前提の考えにあるようでした。ただなんというか、芸事ってそういう裏面の努力とかってあんまり見えないほうがいいんじゃない?とかアマチュアの私は思いましたけれども。最近の漫才ブームも裏側見せすぎですし。

そこから考えが発展していった結果、ただ単にマジックだけをやるだけでなく、彼女はより現代アート的な側面を持ったパフォーマンスに傾倒していきます。
コロナ禍前の2019年には、彼女は香りを使って不思議な体験を作り出すパーラーショー「Bottling the Impossible」を演じていました。例えば、選んだ香りが空の香水瓶に出現する、という、"Think a Drink"の香り版のようなトリックも演じていたようです。
他の作品も結構尖っています。歴史上かなり古いマジックの本である『The Discoverie of Witchcraft(妖術の開示)』に掲載されているトリックを、モールス信号に変換してその後音符に変換、その音階をチェロで演奏してもらいながら、ジプシースレッドを演じる In Plain Listenという演技もあります。狙いとしては、現象を「目」で見ながら、「耳」で解説を言語じゃない形で聞いて、視覚的なものと聴覚的なものを融合させること、らしいのですが、アート感覚が絶望的な私はよくわかりません。以下がパフォーマンスの映像です。

尖りすぎることによってマジックを現代アートに昇華することはできるのですが、同時に大衆性を失うことは彼女も承知していて、自分の作品が親しみやすいものであることも強く望んでいるとのことでした。

これらのものパフォーマンスとして面白いものになっているかどうかはコメントしにくいのですが、挑戦の方向性としてはとても面白いな、と思い記事を読んでいました。あと映像見ていただくとわかると思うのですが、Andrews本人が非常にビジュアルがよくカッコいい上に、おしゃれすぎておりまして、このおしゃれ感があるマジックショーってなかなかないよな~なんて感じました。

訃報が目立った、悲しい号でもありました

メイン特集以外の記事では、訃報が目立ちました。メンタリストのLarry Becker、カーディシャンのDarwin Ortiz、コメディマジシャンで日本にも何度か来ていたDan Garrett、SAMの会長も務めたRichard Dick Gustafsonなど。毎月訃報が載っているのは悲しいことですね。

他にはマジックニュースとして、America's Got Talentでの初の女性マジシャンでファイナリスト Anna Deguzmanについても言及が。惜しくも優勝はのがしてしまいましたが、彼女の決勝戦のパフォーマンスはこちら。

彼女はフィリピン出身で現在アメリカ在住です。実は私は生で彼女を見たことがあるのですが、当時まだ10代で、カードのフラリッシュが非常に上手な女の子、という感じだったのですが、いつの間にかスター街道まっしぐらでびっくりしました。
ちなみに彼女が出たときは日本からも健闘していて、ダンスユニットの「アヴァンギャルディ」や「チビユニティ」がむちゃくちゃいいところまで進んでた回です。

その他面白かったもの

その他、いつも通りたくさんのコラム。いくつか面白かったものを箇条書きで…

  • ジョン・ラッカーバウマー(Jon Racherbaumer)のコラム

    • ポール・ルポールの作品の改案

  • ジム・ステインマイヤー(Jim Steinmeyer)のコラム"Conjuring"

    • メンタリズムショーのオープニングにぴったりのトリック解説

    • 自分当てに手紙をポストに投函しておいた、というストーリー。

    • 日本語だと厳しい部分がありそう(頑張ればなんとかなりそう)

  • クリスチャン・ランバート(Krystyan Lambert)のコラム "Stage as Studio”

    • マジシャンと観客の間の力関係について。「あなたが知らないことを知っている」というマウントになりがちだよね、という話

    • その他小話が面白かったですよ、一読の価値あり。

  • ジョン・バノン(John Bannon)先生のポーカーデモンストレーションのトリック解説

  • 名物コラム”Magicana":ラリー・ジェニングズ(Larry Jennings)の未公開トリックを編集長Richard Kaufmanによる解説。

感想というか内容紹介になってしまいましたが皆さんの感想もぜひ聞かせてください!
Podcastをお聞きでない方はこれをきっかけにぜひどうぞ!

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