不登校って子どものせい?
けい先生です。この記事をお読みの方には、保護者の方々、学校関係者、あるいは生徒という方もいるかもしれません。これらの方々に共通するのは、ともに「教育当事者」である、ということです。だから、その苦悩や目指すところは、根本では共通していると思います。様々な視点を受け入れ、共感することをあきらめないでください。
さて、下の表は文部科学省調査の一部です。不登校の要因が示されています。
1 不登校の要因~視点を変えると~
無気力・不安が51.8%で約半数を占めています。次に生活リズムの乱れ、遊び、非行が続き、いじめや親の関わり方も要因になっていることが分かります。このデータですが、調査対象は誰でしょうか?
学校関係者と県・市町村教育委員会ですね。それでは、不登校当事者の子どもたちは不登校の原因をどう考えているのでしょうか?
一見して明らかです。小学校では「先生のこと」が3割を占めて堂々の1位です。生活の乱れや心身の不調もありますが、友達のことや「勉強が分からない」も20%を超えています。「きっかけが分からない」の割合が高いことも注目されます。
私はこのデータをもって、先生が悪いと決めつけるつもりはありません。ただ、教職に関わる者として、先生方にはこのデータにしっかり向き合っていただきたいという思いを持っています。さらに中学校のデータを見てみましょう。
身体の不調が1位になっていますが、「勉強が分からない」「先生のこと」はやはり上位です。「友達のこと」がきっかけとなることも多いようです。
2 子どもにガマンを強いる学校
学校の先生は、不登校の原因を生徒自身、または家庭の問題にしようとします。この傾向は文科省調査でも明らかですし、経験からもうなずけるところです。私自身の反省も含みますが、学校は、自分たちが子どもたちに様々なガマンを強いていることに、自覚的にならねばならないと思います。もう一つデータを示します。
同調査から学校を休んでいるときの気持ちについての調査結果です。学校にいないことで、心が休まっている様子がよく分かります。楽しくない勉強、校則を始めとする厳しいルール、さらに、子どもたちは主体性を含む様々な観点で日々評価にさらされます。
文科省による2022年度の「児童生徒の問題行動・不登校調査」の集計結果では不登校の小中学生は過去最多の約29万9千人です。小中高生の自殺者数が514人でこちらも過去最多となりました。この悲惨な結果は、本当に子どもたちのせいでしょうか。
3 "学校"がすべてではない
教育機会確保法(2017年施行)の重要なポイントは、次の点です。
不登校は誰にでも起こりうることで、問題行動ではない
多様な学びの場があるから、登校は目標ではない
子どもが進路を主体的にとらえて社会的に自立することを重視する
私が定時制高校の教員だったころのことです。不登校の教え子がいて、ときどき家庭訪問に行ったものです。あるとき、ゲームをきっかけに海外のゲーマーと英語でチャットをするようになり、いつのまにか留学していきました。
保護者、生徒のみなさんへ。無理をしなくて構いません。学校は、学校へ通うことが正しいと言うかもしれませんが、気にする必要はありません。子どもには子どものペースがあります。同じ当事者同士のつながりも作れます。とにかく、一人で悩まなないことが大切です。あなたの苦しみはあなただけのものではありません。
学校の先生方へ。まずは、学校を楽しくしませんか。生徒が言うことを聞かない、現実は複雑で一筋縄ではいかないことは分かります。しかし、その言うことを聞かない生徒が、これまでの学校で傷ついていることにも思いを致す必要があるのではないかと思います。子どもたちが「明日も行ってみようかな」と思える学校を、ともにつくっていきませんか。
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