恋愛レベル1

子どもの頃、ゲームの攻略本を読むのが好きだった。

とりあえず、実際のプレイもそこそこに、辞書みたいな分厚い攻略本を隅から隅まで読み込む。敵の倒し方やマップ、制作者インタビューまで読んで楽しむと、大体本当にクリアすることはどうでも良くなって、引き出しの奥に封印したり、ブックオフ行きを余儀なくされたカセットがたくさんある。

今では、ほとんどと言っていいほどゲームをやることもなくなったが、YouTubeのゲーム実況動画は時々見てしまう。何十時間もかけて自分の時間を使いプレイするより、ちょいちょい飛ばしながら上手い人のプレイをつまみ食いする方が好きなのだ。

僕の恋愛も、そんな感じ。昔から本や映画、ドラマなどを見まくっていたので、恋愛中の人の心の機微や駆け引き、絡まり合う人間関係などは嫌というほど知っている(気でいる)。なんなら恋愛が成就した後の結婚生活、子どもが出来て、恋人の頃の関係でいられなくなり、倦怠期を迎えケンカも増え、最終的に離婚に至るまでの話もたくさん知っている(ドラマで)。ファンタジックなものにしろリアル路線にしろ、とってもエモーショナルでドラマチックだ。

ところが、現実の恋愛は、もっと地道な過程の積み重ねであることを最近身をもって実感している。ドラマや映画なんていうのは、2時間とか、連ドラでもせいぜい10話とかで面白い展開を作るために、かったるい過程はすっ飛ばして描いているのだ。そもそも、出会うまでに一悶着あるし、作為的な出会いはお互いに打算のもと成り立ってるからロマンチックとはほど遠いし、関係を深めるためにはかなりの根気と忍耐を要する。

恋愛経験が乏しいのに、結果だけ早く欲しい僕は、草むらでのレベル上げもそこそこにボス戦に挑み、敢えなく撃沈する日々だ。これまで、いかに経験を積んでこなかったかが分かる。恋愛における経験が多いことが別に良いわけじゃないが、コツコツとした努力もせず結果だけ欲しがるなんて、そりゃいくらなんでも都合が良すぎやしませんかという話だろう。

そもそも、僕はこの恋愛というゲームをプレイしたいのか。皆がプレイして殿堂入りしている人気コンテンツだから、自分もやりたいと思っているだけじゃないのか。恋人は欲しい。何気ない日常を一緒に過ごしたり、笑い合ったりしたい。イチャイチャもキュンキュンも渇望している。

しかし、自分のしたいの欲求が先行しすぎて、誰かのことを本気で好きになるという感情が全然ついてきていない。自分ひとりで過ごす時間を割いてまで、誰かと一緒にいたいと思えるのだろうか。ていうか、世の人々は早々に結婚だのパートナーだのを決め、ひとりに絞っているが、その選択は本当に正しいのか、とか思うことはないのだろうか。

好きな人、大事な人はそれなりにたくさんいる。でもその中で、飛び抜けてくる人がいない。結局、自分のプライオリティが高すぎて、自分よりも自分のことのように誰かを愛せる未来が想像できない。

自分でも書いてて激重だなぁと思う。実際の経験が少ないまま、理想と妄想だけが膨らんだ結果、こうなってしまっているのだ。若干の疑問と不安と虚しさを抱えたまま、僕は今誰かを探している。

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