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介護報酬減額だけが問題ではない⁈ 介護士の現在地と世代が分断された弊害



今回はこの記事を見ていきます。

【記事の概要】



・6月からの改訂で、特別養護老人ホームや老健の介護報酬が増額されるにもかかわらず、在宅介護に欠かせない訪問介護の介護報酬が減額となった。


・「その背景には、7.8%という高い収益率があったからです。

しかし、そこには同じ建物に多くの利用者がいて、移動時間などなく効率的に生活援助できるサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)が訪問介護に含まれていることも要因の一つと見られています」
(全国紙記者)


・訪問介護事業所は経営的に厳しく、待遇面でも他業種に比べ劣るという。


・介護保険サービスが開始された当初、1件の介護時間が平均2〜3時間で、1日3、4件くらい回り、訪問ヘルパーの月収は25万円ほどだった。

・ヘルパーは短時間のサービスを1日7〜8カ所回ることになり、同じ時間働いても移動時間や待ち時間が占める時間が長くなり、月収は18万円くらいまで下がっているのだという。
(介護事業者『NPOわかば』(世田谷区)理事長の辻本きく夫氏)


・その背景として

①制度改定のたびに生活援助サービス時間が削減され

②1回あたりのサービス時間が短くなり、またデイサービスの送り出しなど短時間のサービスが多用されるようになったため

③現在では1サービスあたりの労働時間が平均40分ほどになってしまった

ことが挙げられている。


・訪問介護は低賃金やきつい仕事であるため、慢性的に人材不足だという。

・2024年の介護職員の有効求人倍率は、施設介護職員が3.79であるのに対し、訪問ヘルパーは15.53。

つまり15社が求人しても、集まるのはようやく1人

・また訪問介護事業所には若手が定着しないため、高齢化の一途を辿っており、4人に1人が65歳以上、平均年齢も54.7歳。


・「介護保険だけでは収益を上げることは難しいので、介護保険外のオリジナルサービスを組み入れるなどして工夫しています。

訪問介護を始めて3年ですが、まだ赤字が続いているためです」
(訪問介護事業所『てんまるっと』の村松幸男氏)


・東京商工リサーチの1月17日の発表によると、2023年、《「訪問介護事業者」の倒産は過去最多を大幅に上回る67件に達した》。その大半が小規模事業者だという。


・訪問介護は人材不足で、都内であっても一人の利用者を一つの事業所だけで見ることは難しい状況。

・そのため希望の日時にサービスを入れることは難しく、利用者の施設入所や死亡によってサービスが空くのを待つこともある。

・介護報酬が削減され訪問介護が崩壊すれば、状況はますます悪化し、家族の負担が増すことになる。


・ヘルパーは呼んでも来ない、なかなか予約が取れない、おむつや食事など、いままで訪問介護に頼っていた多くの生活支援なども、介護する家族にのしかかる。

介護離職する人の数は年間10万人と増えている。在宅介護のため働きに行けなくなり、「破産」する家庭が急増することになりかねない。

【介護士の現在地】子どもたちに選ばれない介護職



まさしく介護問題は「待ったなし」の状況に差し掛かっています😧

訪問介護が「やりたい仕事」になっていない(労働条件が厳しく給料も少ない)から、若手が定着せずに60代以上のヘルパーが現役で踏み止まらなければならない事態となっています😔


ただ、ここで疑問になるのが「条件が良ければ訪問介護をするのか」であり、もっと言えば「高齢者介護を若者がやりたいと思えるか」がネックになっているのではないか、ということです。


そのことを考えるにあたって、小学生の「将来の夢・職業」を参考にしましょう。



見ての通り、男女ともに将来の夢・なりたい職業に「介護士」が含まれていません🫥

それどころか親から見ても「なってほしい職業」に選ばれていないことにも注目しましょう。



また高校生の就職を支援 している株式会社ジンジブ によれば、複数回答可のなりたい職業ランキングにおいて「介護士」は第20位で、全体の4.4%でした。



複数回答であることから、第一候補としての介護士は実際には更に低くなることが予想されますから、介護士が「若者が目指す職業」とは言い難いでしょう😞


これらを合わせると

「子どもの頭の中に介護士という選択肢はないし、親もなって欲しいとは思っていない。高校卒業までに何らかのきっかけで介護士を知った少数の若者が介護士になろうとしている」

というのが現状なのです😶


介護報酬以前の問題で、そもそも若い世代の意識に「介護」がない訳ですから、「条件が良くなれば人が集まる」というのは楽観的ではないか、と言えます😰

【世代が分断された弊害】



では何故若い世代の意識に「介護」がないかと言えば、シンプルに「祖父母と一緒に暮らしていないから」です。


住んでいる家に祖父母がいなければ、若者にとって多くの「高齢者」は赤の他人であり、彼ら彼女らの中で「血の通ったリアルな人間像」にはなりません🥺

しかも場合によっては「自分のやりたいこと」に文句を言ってきたり、止めてきたりする『悪役』になっているかもしれません😢


更に、『親の介護』のことで両親が揉めている場面でも見ようものなら「関わりたくないな😨」と介護を遠巻きにすることすらあり得ます。


たくさん職業があり、自由に選べる今の時代で、なぜわざわざ大変そうな「介護」を選ばなくてはならないのか。


若者に対してその答えを出せない時点で、あるいは「今を生きる大人たち」が『人生の先達』たる高齢者を大切にしていない時点で、介護は衰退するしかないでしょう😱



それら全て、世代が分断され「人が生きるとはどういうことか」を『連続した実体験』として伝えられなくなった為に起きているのです。


元気だった祖父母が段々と老いて、やがて床に伏し、天寿を全うされる。

その『時間』の流れを見ずに、都度都度の状態だけを知らされて、気づいたら葬儀場で遺影と対面する『空間』にいる…。


それで、どうやって人生の営みを感じ取れるというのでしょうか。

何の感情が湧き上がるというのでしょうか。


若者にとって高齢者が「血の通った人間」とならない限り、そこに『情』は生まれず、まして「介護をしよう」と思うこともありません。


マーケティングなどでよく使われる『単純接触効果(ザイオンス効果)』を思い返せば、

「高齢者との接触回数が多い若者」が増えるほど高齢者への『情』が湧き、介護士を志す若者も増える

ことが伝わるかと思います🧐



つまるところ、これまでの介護業界全体が子どもと高齢者を結びつける『世代間の橋渡し』をしてこなかったからこそ今の窮地がある訳で。

介護保険制度以降、『報酬単価』を追うあまり施設入居者を外に出さず施設に閉じ込めて「介助漬け」にして利益を上げてきた弊害が介護業界全体を蝕んでいるのです😔
(もちろん障害者福祉に関しても同じことが言えます)

【まとめ】介護を人が好きな人にとっては堪らない職場へ



今回は「介護報酬改定」の記事から読み解ける「そもそもの話」をしてきました。


給料という「わかりやすい基準」を出された結果、「給料が上がれば担い手が増える」と誤解して起きたのが2022年、2024年の処遇改善加算でした。

それらは既存の介護職にとって「仮初の救い」になるだけで、やがて処遇改善の財源確保のため自分たちの首を絞めることになるのは、『介護職の賃上げは貧しさを生む』でお話しした通りです💸



そもそも、給料が上がったくらいでは「他にもっと楽しくて稼げる仕事」にあふれる今の世の中で、新規参入者にとって魅力にはなりません。

こうしたことは『他分野への理解』があれば自然と分かるはずですが、以前「ケアの専門性」でお話ししたように、介護の専門性を誤解して自分野ばかりを究めようとするほど見えなくなってしまうものなのです🥲



介護とは『生命の価値(ヒト)』を「介(たすけ)護(まもる)」ことですから、ここには人が人を好きになるだけの『愛情』が欠かせません。

その『愛情』を持たせる為に、これまで何をしてきたか。どのように子どもたちと、地域と関わろうとしてきたか。


ここなくして、介護問題が解決することはありません。

ここと向き合わないのであれば、『愛』か『AI』を装って人を騙し切るしか乗り越える術はないでしょう😑



前提を間違えれば、それに続くすべてのものを間違える」という話であって。

人が人を好きになるような社会なら、介護ほど「人が好きな人にとっては堪らない職業」もないのですから、放っておいても人が集まります🥰


ひるがえって、そうなっていない現実には何が欠けているのでしょうか?


今回もここまで読んでもらい、ありがとうございます☺️




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