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【介護】その経営危機は今に始まったことなのか


今回はこの記事を見ていきます。

介護報酬改定、特養が俎上に 関係者から悲鳴 「介護施設は前代未聞の経営危機」

介護ニュースJOINTより

【記事の概要】



・来年4月の介護報酬改定に向けた協議を重ねている国の審議会で7日、特別養護老人ホームが取り上げられた。

・「介護施設は前代未聞の経営危機に陥っている。キャッシュフローが回っていないことは明白だ」と日本医師会の江澤和彦常任理事は問題提起。

・「更に物価高騰が襲いかかっており、大変な危機に瀕しているというのが共通の認識。介護施設の基本報酬の増額を図り、サービス提供体制の崩壊を防ぐことが喫緊の課題ではないか」と。


・福祉医療機構の調査結果によると、2021年度に赤字だった特養の割合は従来型が42.0%、ユニット型が30.5%

光熱費の膨張や人件費の高まりで経費が増したことなどでいずれも前年度から悪化。


・「高齢者が必要なサービスを受けられなくなると危惧している。国には迅速かつ柔軟な支援措置をお願いしたい」と全国市長会を代表する大阪府豊中市の長内繁樹市長。

・全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、「物価高に対応する“賃上げ機運”の高まりにつれて人材が異業種へ流出するなど、人材難にも拍車がかかっている。もはや施設の経営努力だけでは限界に来ている。大幅な介護報酬の増額を」と注文。

・併せて3年に1度のサイクルで実施される報酬改定の間のコスト増に対応していくため、その上昇率と連動する物価スライド、賃金スライドの導入を検討すべき、と。

【経営努力の限界】



「介護報酬が不足しているので経営難」というのが一貫した主張ですが、仮に介護報酬が足りていれば経営は安定化するのでしょうか。


「賃上げ機運の高まりにつれて人材が異業種へ流出」とありますが、「お金を理由に介護から離れる判断をする」というのは裏返せば「その施設で働く『意味』を見出せていない」ということ。

雇用条件等の『機能』勝負をすれば大手企業の資本力に敵わないことは明白で、尚且つ収入源を税金に頼る運営手法では国民全員を貧しくするのみです。



また日本の人口動態を見れば「人がいなくなること前提」で施設経営を考えていかなくてはならず、介護報酬をむやみに増やしたところで働き手は物理的に減る一方であるため、施設に「使われないお金」が貯まる結果になりかねません。

それならば『少人数で回せる施設サイズ』を模索して地域に点在させた方が介護ニーズに応えられる形になるでしょう。

現に介護ロボット等テクノロジーの導入による人員配置緩和など、少ない人手で施設を回せるよう工夫するケースも増えており、そうしたモデルケースから学ぶことは多いと感じます。


とはいえ、物価高による経営難が喫緊の課題であることも確かで、物価上昇に合わせた賃金スライドは現実的な解決策と言えます。

「ただお金を回せばいい」というのではなく、二重・三重の手立てを講じる必要があるでしょう。

【介護施設で働きたい?】



そして殊『人材不足』においては、シンプルに「その介護施設で働きたいか」が問われています。


どれだけ雇用条件等の『機能』が満たされたとしても、そもそも働く『意味』が見出されなければ人は集まりません。


そうした『意味』の発信が現在の介護施設でなされているかと聞かれれば、良くてInstagram等のSNSで活動の様子が投稿されているくらいのもの。

そこでの投稿を見る限り、確かに楽しそうに過ごされる利用者・職員の姿がありますが、それはどこまで行っても「場面の切り取り」であり、空気感は伝わりません。

これだと「自分がその施設で働くイメージ」にはまだ足りず、動画やライブ配信等を織り交ぜる必要がありますし、それができる人材も必要となります。


ただ、そうした人材が介護現場に集まらないのは「別で稼げるから」であり、介護報酬が上がったとしても「自分で稼ぐ」よりも収入が低い以上、『報酬の上げ損』となってしまいます。
(報酬を上げる以上、利用者負担か国民負担のどちらかが増える訳ですから)

ですから「施設独自の収入源」が必要で、施設運営に欠かせない技能を持つ介護人材に手当が支給できる体制を整えることが急務なのです。


そうした介護人材の技能を「無償」で使ってきたこれまでの経営手法こそ見直さなければならないのです。

【まとめ】



今回は特養の経営難について見てきました。

元々経営として限度があるようなやり方で押し通してきた結果いよいよ担い手にも限界が訪れた、という話です。


特養で3年ほど勤めていた方の話を聞けば、

「人を人として扱わないようなやり方で毎日が目まぐるしく過ぎていき、何のために働いているのか。ここに加担している自分が居たたまれなくなった」

と悲しい顔をして話されていました。


また別の方は

「入浴待ちで廊下にずらりと並べられたり、芋洗式に身体を現れる利用者を見ていると、親は絶対に特養に入れたくないと思った」

と語っておられました。


これらの状態を解決しないまま介護報酬だけ増やしたところで、「人としてここで働くのはどうなのか」という良心の呵責を生むような在り方を改善できなければ、やはり人は集まらないのです。


なぜなら、他にいくらでも働きようはあるのだから。


何故自分が辛い思いをしてまで介護施設で働かなくてはならないのか、その『意味』を施設側が提供できないままでは何ら解決しないのです。




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