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ナイジェリア国鉄旅 8

第7章 決断

ラゴス出発から37時間、Kaduna Junction駅のホーム。時間は午前5時過ぎだがあたりはまだ真っ暗だ。満月に照らされる列車と屋根の上の乗客のシルエットが何気に幻想的で美しい。

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ジャンクションということは、別の路線との分岐点という意味なのだが、その路線は何年も前から休止になっていて、実質分岐駅ではなくなっている。ファーストクラスの半分くらいの乗客はこの駅下車ということで、すでにファミリーとなっていた仲間たちと抱き合ってお別れをする。一期一会。

すでにガラガラになった車両の座席に戻り、もう一度終着駅カノの到着時間を推定してみるも、やはり相当にスピードアップしない限り16時前に到着することは難しそうだ。今日はラゴスに帰れないのか。仮に一泊して翌日帰るとして4連休の最終日、チケットに空席があるのだろうか。思いを巡らせていると、ふと良い考えが閃いた。カノから首都アブジャの飛行機に乗り、そこからラゴスに乗り継いで帰る案だ。18時のカノ発アブジャ行きには乗れそうだ。飛行機を調べてみると、ラッキーなことに空いている。よしそれだ!
我ながら自分のアイディアに感心して、ウキウキして値段を確認、そして奈落の底に落っこちた。チケット代は、カノ−アブジャ間32,000ナイラ、アブジャ−ラゴス間不明(推定30,000ナイラ)。。つまり私とローランドの2人分で124,000ナイラ(約41,000円)。なんと持ち金が足りない!この旅では安全を考えて必要以上のお金を持ってこなかったのだ。手持ちは10万ナイラ(それでも500ナイラ紙幣200枚で札束2束だけど)。基本的に国内ではナイジェリア国内で発行されたクレジットカードしか使えず、私はそのカードを持っていない。ではこの駅で降りるか?いやいや、ラゴス-カノ全線走破に意味があるのだ。しかしカノに行ったら?ホテル代を払ったら、明日の飛行機が払えるのか?そんなことを頭の中でスパークしながらフル回転させる。時間は5:58、発車の合図の警笛が聞こえてきた。
「降りるぞ!」
そうローランドに叫ぶと、デイパックをガバッと掴み出口に走る。私が先に飛び降りた瞬間、列車は動き出し、ローランドは私に続いて列車から飛び降りた。

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やはりここはナイジェリア、好奇心より安全は最優先だ。と自分に言い聞かせる。おもむろにiPhoneを取り出し、カノに向け去りゆく列車を見送った。その時「オイボー」という女性の声が。慌ててカメラを向けると食堂車の窓から私に手を振る、専属シェフのお姉さんが見え、ゆっくりと遠ざかっていった。別れの挨拶をせずに途中下車してしまったと後悔。列車が見えなくなるまで、見送った。
あたりはすっかり明るくなっていた。

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ラゴス-カノ間 1126km 列車の旅
実走ラゴス-カドゥナジャンクション 903km
所要時間 37時間50分
平均時速23.9km

全走行80% 未遂にて、ここに完結

エピローグ

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